2章:解らぬ事ばかりが増えていく
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「若葉ちゃん。紹介するわね。こちらはウィリアム・レノックス大佐。部署は違うけど私も色々をお世話になっている方だから失礼のないようにね?再婚相手のあの人からあっちに着くまでの間は色々と面倒を見るように言われて来てくれたの。何かあれば遠慮無く言ってくれって言っているわ」
「え?この人が再婚相手じゃないの?」
「違うわよ?言ったじゃない。あの人はアメリカから離れられないって。だから代わりに大佐が迎えに来てくれたのよ?」
当たり前のことのように母から返された言葉に若葉は何とも言えない目をしてレノックスを見つめれば、レノックスはニカッと友好的な笑みを浮かべてくれた。
自己紹介も無事に終わった事に母は満足そうに微笑むとレノックスと再び英語で会話を行う。
途中、何度かレノックスの携帯が鳴ったため会話が中断されることもあったのだが、最終的にレノックスが申し訳ないと言うかのように何かを告げると、母は気にするなというかのように微笑み彼の肩を軽く叩く。
「なにかあったの?」
思わず問いかけてしまった若葉に向かい母は困ったように微笑みながら答える。
「ちょっと色々と問題が起きちゃったみたいで、飛行機の搭乗までもう少し時間が掛かりそうなの。そういうわけだからラウンジでお茶でも飲んで待っていましょうか」
「うん。解った・・・母さん英語解るの?」
「解るわよ?職場では英語がメインだからね」
「・・・私全然解らないんだけど」
「大丈夫よ。夏休みの間にあっちにいれば嫌でも理解するし、自然と話せるようになるから。話せないのなら困ったことになっちゃうかもしれないけど仕方がない事ね」
ある意味スパルタとも言えるやり方に若葉はブルリと身体を震わせた。
母の言動から恐らく自分はアメリカに行けば安全は確保した上で放り出されるだろうなと若葉は感じ取っていた
嫋やかな見た目に反して時と場合に応じて剛胆な事をすることを若葉はこれまで何度も体験してきている。
三人でラウンジへと向かう中、若葉はレノックスの後ろ姿を見つめながら問う。
「レノックスさんって大佐って事は軍人なんだよね?」
「そうよ」
「母さんも・・・軍に絡んでるの?」
母の仕事に関して今更でしかないことだが、あまりにも自分は知らなさすぎていたということに若葉は気づく。ためらいながら母に問いかければ、母は何かを考えるかのように沈黙をしていたが、ぎこちなく微笑みながら口を開く。
「お母さんの仕事に関する事も含めてアメリカに着いたら説明するわね」
上手い具合にはぐらかしながら母が答えた言葉に若葉は何とも言えない顔をして黙り込むことしかできなかった。
目の前に居るはずの母の存在が今は何故かとても遠く感じられた。