慈しみの雨【アモン → 主 ← ハウレス ✉】
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「お手をどうぞっす……主様」
アモンの手を借りて、馬車を降りる。
コツ……と密やかな靴の音を立てて降り立つと、降り注ぐ陽光がその横顔を柔らかく照らした。
「ありがとう」
紅をのせた唇を綻ばせると、彼は瞳をさ迷わせた。
その意味を図りかねて、とまどった瞳で見上げられる。
「? アモン……?」
心まで見透かせそうに、穢れなき深青の瞳。
そんな筈はないのに、
強く打ち鳴らす心音までも悟られそうな気がして、益々心がざらついた。
「アモン……? 本当に大丈夫……?」
とまどいの色を濃くした瞳が、まっすぐに彼を映す。
そんなふたりの間を取り持つように、ハウレスが彼女に微笑みかけた。
「主様、本日はどちらへ?」
「果物を3種類……それと薄力粉かな」
ぺら、とドレスの隠しポケットからメモを取り出す。
その瞳は優しい煌めきを宿していて、今度は染みが広がった。
(あぁ………そうっすよ)
否応なしに侵蝕する感情は、そう——。
(っ……オレは、)
はっとして、気づかれぬようにそっと握りしめた拳のなかで爪を立てる。
(決めた筈でしょ。どんなあなたでも、そのすべてを慕うって)
膨らんでいく想いと願望(ねがい)。
蓋をして、抑えつけて、悟られないようにする日々は、酷く苦しいけれど。
(でも……それでもオレは、)
ただ、あなたの側にいたくて。その笑顔を、ただみつめていたくて。
(愛してるっすよ……主様。たとえあなたが想っているのが、オレじゃないとしても)
想いを封じ込め、彼女をみつめる。
「? なあに?」
すると、視線に気づいた彼女が不思議そうに見返してきた。
首を傾げた途端、さら……と艶やかな髪が流れる。
「なんでもないっすよ。それより………、」
彼女の手を取り、悪戯に口角をつり上げる。
「(オレと来てくださいっす……ヴァリス様)」
唇の動きだけでそう告げると、駆け出した。
「アモン……! 何処へいくんだ」
「すぐに戻るっすから。
ハウレスさんは買い出しお願いしますっす……!」
「おい……!」
背に放たれた声を無として、靴の音を響かせた。
アモンの手を借りて、馬車を降りる。
コツ……と密やかな靴の音を立てて降り立つと、降り注ぐ陽光がその横顔を柔らかく照らした。
「ありがとう」
紅をのせた唇を綻ばせると、彼は瞳をさ迷わせた。
その意味を図りかねて、とまどった瞳で見上げられる。
「? アモン……?」
心まで見透かせそうに、穢れなき深青の瞳。
そんな筈はないのに、
強く打ち鳴らす心音までも悟られそうな気がして、益々心がざらついた。
「アモン……? 本当に大丈夫……?」
とまどいの色を濃くした瞳が、まっすぐに彼を映す。
そんなふたりの間を取り持つように、ハウレスが彼女に微笑みかけた。
「主様、本日はどちらへ?」
「果物を3種類……それと薄力粉かな」
ぺら、とドレスの隠しポケットからメモを取り出す。
その瞳は優しい煌めきを宿していて、今度は染みが広がった。
(あぁ………そうっすよ)
否応なしに侵蝕する感情は、そう——。
(っ……オレは、)
はっとして、気づかれぬようにそっと握りしめた拳のなかで爪を立てる。
(決めた筈でしょ。どんなあなたでも、そのすべてを慕うって)
膨らんでいく想いと願望(ねがい)。
蓋をして、抑えつけて、悟られないようにする日々は、酷く苦しいけれど。
(でも……それでもオレは、)
ただ、あなたの側にいたくて。その笑顔を、ただみつめていたくて。
(愛してるっすよ……主様。たとえあなたが想っているのが、オレじゃないとしても)
想いを封じ込め、彼女をみつめる。
「? なあに?」
すると、視線に気づいた彼女が不思議そうに見返してきた。
首を傾げた途端、さら……と艶やかな髪が流れる。
「なんでもないっすよ。それより………、」
彼女の手を取り、悪戯に口角をつり上げる。
「(オレと来てくださいっす……ヴァリス様)」
唇の動きだけでそう告げると、駆け出した。
「アモン……! 何処へいくんだ」
「すぐに戻るっすから。
ハウレスさんは買い出しお願いしますっす……!」
「おい……!」
背に放たれた声を無として、靴の音を響かせた。