砂糖菓子の鳥籠 Ⅱ 【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「!」
ヴァリスは、はっと吐息を封じた。
薙ぎ払われ散り散りに漂っていた靄たちが、再び密集して今度は別のものを形づくる。
そして現れたのは黒曜の短剣だった。
無数の刃が、ボスキの背へと狙いを定め———。
「(ボスキ、後ろ……!)」
彼女はそう叫びたかったが、ひらいた唇からは何の音も発せられなかった。
「? 主様?」
ぱく、ぱく、と声なき言葉で伝えようとしても、彼は気づかない。
その間にも刃は彼の背へと飛んできて———。
「駄目……!」
気づけば彼を突き飛ばしていた。
標的を失った短剣たちが、その身を貫こうとした瞬間。
「主様!」
ザン、と踊るように舞う長髪。
その腕のなかへ肩を抱き寄せながら、手にした大鎌にこびり付くような靄を払った。
「ルカス……!」
その名を呼べば、ほんの少しだけ柔らかくなった眼差しを注がれる。
けれどそれは一瞬のことで、すぐに厳しい視線で前方を睨んだ。
「ボスキくん、主様を私達の後ろへ。
ベリアンがすぐにカレッセン公をお連れするから!」
「えぇ、わかっています……!」
ヴァリスを守るように二つの背で囲い込みながら、その手のなかの刃を振るう。
くす、くす、………くす、くす。
ひそ、ひそ、………ひそ、ひそ。
姿形のない靄たちを相手に踊るその切っ先を前に、いくつもの少女のようは嗤い声が響き渡る。
『まぁ、とんだ愚か者だわ』
『本当……! たかだか一人の女に……!』
『そこまでムキになって私達を倒そうとするなんて……!』
耳につく嗤い声。
澄んだ音域でありながら、なぜだか酷く醜悪に感じた。
後方ではヴァリスが耳を塞いで震えている。
その姿を視界の裾にとらえながら、みずからの内で鮮血が駆け巡った。
ヴァリスは、はっと吐息を封じた。
薙ぎ払われ散り散りに漂っていた靄たちが、再び密集して今度は別のものを形づくる。
そして現れたのは黒曜の短剣だった。
無数の刃が、ボスキの背へと狙いを定め———。
「(ボスキ、後ろ……!)」
彼女はそう叫びたかったが、ひらいた唇からは何の音も発せられなかった。
「? 主様?」
ぱく、ぱく、と声なき言葉で伝えようとしても、彼は気づかない。
その間にも刃は彼の背へと飛んできて———。
「駄目……!」
気づけば彼を突き飛ばしていた。
標的を失った短剣たちが、その身を貫こうとした瞬間。
「主様!」
ザン、と踊るように舞う長髪。
その腕のなかへ肩を抱き寄せながら、手にした大鎌にこびり付くような靄を払った。
「ルカス……!」
その名を呼べば、ほんの少しだけ柔らかくなった眼差しを注がれる。
けれどそれは一瞬のことで、すぐに厳しい視線で前方を睨んだ。
「ボスキくん、主様を私達の後ろへ。
ベリアンがすぐにカレッセン公をお連れするから!」
「えぇ、わかっています……!」
ヴァリスを守るように二つの背で囲い込みながら、その手のなかの刃を振るう。
くす、くす、………くす、くす。
ひそ、ひそ、………ひそ、ひそ。
姿形のない靄たちを相手に踊るその切っ先を前に、いくつもの少女のようは嗤い声が響き渡る。
『まぁ、とんだ愚か者だわ』
『本当……! たかだか一人の女に……!』
『そこまでムキになって私達を倒そうとするなんて……!』
耳につく嗤い声。
澄んだ音域でありながら、なぜだか酷く醜悪に感じた。
後方ではヴァリスが耳を塞いで震えている。
その姿を視界の裾にとらえながら、みずからの内で鮮血が駆け巡った。
