砂糖菓子の鳥籠 Ⅱ 【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】
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『捨てられた子、………捨てられた娘……!』
『憐れで、滑稽な操り子………。』
『ヴァリス、………ヴァリス……。運命の娘……!』
「っ………!」
まことの名前を囁かれ、その咽喉を凍らせる。
自分の身体を抱きしめるように指をかけ、ただ声が止むことを祈る。
けれどささやかな願いは、現れた影に潰えた。
周囲を漂っていた靄のような気配が、だんだんとその色を濃くする。
磁石と磁石が重ねあわさるように、靄がだんだんと形づくられていく。
そして現れたのは、顔のない無数の「手」だった。
絶えず笑い声を響かせながら、一斉に彼女へと伸ばされ………。
(厭ああぁっ……!)
ヴァリスは悲鳴を上げたかったが、干上がった咽喉からは何の音も発せられなかった。
「………、…………!」
何度唇をひらいても同じである。
まるで邪な魔法にかけられているかのように、声を奪われていた。
その間にも「手」は彼女のほうへと伸びていき、胸のなかを塗りつぶす恐怖。
(皆……!)
心で彼らを呼んだ、その刹那だった。
「主様!」
ザシュ!と青き刃で「手」を薙ぎ払う。
彼女を背に庇いながら、その刃を振るった。
「!」
濡れた瞳に映ったのは旎く紺碧。
ぺたん、と力の抜け落ちたその身を支えたのは、
細身でありながらしっかりと筋肉のついた腕だった。
「ボ……スキ………。」
その眦に溜まっていた雫を指で掬い上げ、頬に手が添えられる。
「何もされてねえよな?」
こっくりすると、その指が伸びてくる。
気づいた時には彼に抱きしめられていた。
呼吸さえ封じ込めるように、強くつよく包み込まれる。
『憐れで、滑稽な操り子………。』
『ヴァリス、………ヴァリス……。運命の娘……!』
「っ………!」
まことの名前を囁かれ、その咽喉を凍らせる。
自分の身体を抱きしめるように指をかけ、ただ声が止むことを祈る。
けれどささやかな願いは、現れた影に潰えた。
周囲を漂っていた靄のような気配が、だんだんとその色を濃くする。
磁石と磁石が重ねあわさるように、靄がだんだんと形づくられていく。
そして現れたのは、顔のない無数の「手」だった。
絶えず笑い声を響かせながら、一斉に彼女へと伸ばされ………。
(厭ああぁっ……!)
ヴァリスは悲鳴を上げたかったが、干上がった咽喉からは何の音も発せられなかった。
「………、…………!」
何度唇をひらいても同じである。
まるで邪な魔法にかけられているかのように、声を奪われていた。
その間にも「手」は彼女のほうへと伸びていき、胸のなかを塗りつぶす恐怖。
(皆……!)
心で彼らを呼んだ、その刹那だった。
「主様!」
ザシュ!と青き刃で「手」を薙ぎ払う。
彼女を背に庇いながら、その刃を振るった。
「!」
濡れた瞳に映ったのは旎く紺碧。
ぺたん、と力の抜け落ちたその身を支えたのは、
細身でありながらしっかりと筋肉のついた腕だった。
「ボ……スキ………。」
その眦に溜まっていた雫を指で掬い上げ、頬に手が添えられる。
「何もされてねえよな?」
こっくりすると、その指が伸びてくる。
気づいた時には彼に抱きしめられていた。
呼吸さえ封じ込めるように、強くつよく包み込まれる。
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