砂糖菓子の鳥籠 Ⅰ【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】
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「さて、そろそろ……でしょうか」
一同のやり取りを優雅に片頬杖をついて眺めていたカレッセン公がくすくす笑った。
上着を脱ぎ、胸元を大きく寛げ、解いた髪をその指でくるくるりと弄んでいる。
程よく酒が回ってきて上機嫌といった様子である。
片やボスキの手はゴブレットを手にしてはいるが、
唇に運ぶ所作が止まっており、ルカスも同様だった。
…………流石に酔いが回ってきたのだろう。
「ボスウェル殿、ルシウス殿……それ以上お飲みにならないで」
心配そうに伸ばされた指にふれたのは、温かな手。
するりと華奢な指をとらえ、ルカスは微笑って見せた。
(酒が入れば綻びが出ると思っていたが……、)
『アリエ』・グロバナーの横顔をみつめる。
銀糸が青みのヴェールを纏ったような、さらさらとした青灰色の髪。
線の柔らかく、女性らしさが滲むその身と佇まい。
知性の煌めきを閉じ込めたアウトナイトの双眸。
雪の肌は深青のドレスに鮮烈に彩られ、目にした者を引き付ける。
紅をのせた唇が、忙しなく案じるこころを音としていた。
(この御一行の真の狙いは、恐らく———。)
「いえ……、私達はまだ飲めますよ」
ふわふわりと霞みがかってきた思考を抱え、ルカスは微笑み返す。
「本当に? 先程からあまりワインを口にされていないようですが」
「本当です。実に旨いワインだ……まだまだ楽しませていただきたい」
ボスキも口を揃えるけれど、カレッセン公は満足そうに微笑んだ。
「とうに限界は来ているのでしょうに、
それでも尚粘るとは……貴方たちはしたたかな御仁のようだ」
四十五回目に注がれたワインを飲み干して、彼は楽しげに微笑んでいる。
一同のやり取りを優雅に片頬杖をついて眺めていたカレッセン公がくすくす笑った。
上着を脱ぎ、胸元を大きく寛げ、解いた髪をその指でくるくるりと弄んでいる。
程よく酒が回ってきて上機嫌といった様子である。
片やボスキの手はゴブレットを手にしてはいるが、
唇に運ぶ所作が止まっており、ルカスも同様だった。
…………流石に酔いが回ってきたのだろう。
「ボスウェル殿、ルシウス殿……それ以上お飲みにならないで」
心配そうに伸ばされた指にふれたのは、温かな手。
するりと華奢な指をとらえ、ルカスは微笑って見せた。
(酒が入れば綻びが出ると思っていたが……、)
『アリエ』・グロバナーの横顔をみつめる。
銀糸が青みのヴェールを纏ったような、さらさらとした青灰色の髪。
線の柔らかく、女性らしさが滲むその身と佇まい。
知性の煌めきを閉じ込めたアウトナイトの双眸。
雪の肌は深青のドレスに鮮烈に彩られ、目にした者を引き付ける。
紅をのせた唇が、忙しなく案じるこころを音としていた。
(この御一行の真の狙いは、恐らく———。)
「いえ……、私達はまだ飲めますよ」
ふわふわりと霞みがかってきた思考を抱え、ルカスは微笑み返す。
「本当に? 先程からあまりワインを口にされていないようですが」
「本当です。実に旨いワインだ……まだまだ楽しませていただきたい」
ボスキも口を揃えるけれど、カレッセン公は満足そうに微笑んだ。
「とうに限界は来ているのでしょうに、
それでも尚粘るとは……貴方たちはしたたかな御仁のようだ」
四十五回目に注がれたワインを飲み干して、彼は楽しげに微笑んでいる。