砂糖菓子の鳥籠 Ⅰ【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】
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彼女自身も酒の強さは人並み程度でしかなく、
じんわりとその思考が霞のヴェールに包みゆかれ、
少しふらついた身体をボスキが抱き留めた。
「っと……大丈夫かよ、アリエ殿」
紺碧の手袋を嵌めた手が、力強く支える。
「えぇ……ありがとう」
礼を言いつつも、その腕のなかで身動ぎする。
彼の腕のなかにいるのは落ち着かない様子だった。
「ボスウェルくん、そろそろアリエ殿を離してくれないか」
すこしばかり紅を集わせたそのおもてを見止めたルカスが、見兼ねてそう口にする。
「アリエ殿、俺に抱きしめられるのは嫌じゃないよな?」
いつもの好戦的な微笑を浮かべながら問いかけてくる。
唇は狡猾そうな笑みに染め上げられ、ペリドットの瞳は悪戯を映していた。
「っ……わたくしをからかっているのね」
拗ねた様子でつぶやく。ふいと視線を解かれ、その手のなかのゴブレットを奪った。
「あんたももう終いだ」
代わりに水の入ったグラスを渡すと、礼を言ってから受け取る。
ほのかなローズマリーの香りが、己の酩酊でさえ解いてくれた気がした。
(残るは俺とルカスさんか……。)
ナックはクッションを抱きしめてソファですやすやと眠りはじめ、
ベリアンもヴァリスの頭に甘えるようにすり寄って酒を勧めている。
それを拒みながらも、その瞳が動揺と戸惑いに揺れているさまを見止めた。
けれど心からの困惑ではなく、寧ろ———。
(……ベリアンさんが甘えてきて嬉しいんだな)
華奢な手で彼の背をさすりながら、そのおもてにほっとしたような微笑を浮かべている。
普段は執事としての一定の距離感を保って接している彼だが、
酒に酔うことでその自制が外れているらしい。
滅多に見られないその姿に、彼女は微笑んでいる。本当に嬉しそうに……。
じんわりとその思考が霞のヴェールに包みゆかれ、
少しふらついた身体をボスキが抱き留めた。
「っと……大丈夫かよ、アリエ殿」
紺碧の手袋を嵌めた手が、力強く支える。
「えぇ……ありがとう」
礼を言いつつも、その腕のなかで身動ぎする。
彼の腕のなかにいるのは落ち着かない様子だった。
「ボスウェルくん、そろそろアリエ殿を離してくれないか」
すこしばかり紅を集わせたそのおもてを見止めたルカスが、見兼ねてそう口にする。
「アリエ殿、俺に抱きしめられるのは嫌じゃないよな?」
いつもの好戦的な微笑を浮かべながら問いかけてくる。
唇は狡猾そうな笑みに染め上げられ、ペリドットの瞳は悪戯を映していた。
「っ……わたくしをからかっているのね」
拗ねた様子でつぶやく。ふいと視線を解かれ、その手のなかのゴブレットを奪った。
「あんたももう終いだ」
代わりに水の入ったグラスを渡すと、礼を言ってから受け取る。
ほのかなローズマリーの香りが、己の酩酊でさえ解いてくれた気がした。
(残るは俺とルカスさんか……。)
ナックはクッションを抱きしめてソファですやすやと眠りはじめ、
ベリアンもヴァリスの頭に甘えるようにすり寄って酒を勧めている。
それを拒みながらも、その瞳が動揺と戸惑いに揺れているさまを見止めた。
けれど心からの困惑ではなく、寧ろ———。
(……ベリアンさんが甘えてきて嬉しいんだな)
華奢な手で彼の背をさすりながら、そのおもてにほっとしたような微笑を浮かべている。
普段は執事としての一定の距離感を保って接している彼だが、
酒に酔うことでその自制が外れているらしい。
滅多に見られないその姿に、彼女は微笑んでいる。本当に嬉しそうに……。