砂糖菓子の鳥籠 Ⅰ【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】
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「———アリエ殿、私にある申し出があるのだとか」
ヴァリスがナイフを動かす手を止めた。
花の飾られた皿から視線を上げ、カレッセン公と瞳を合わせる。
彼は穏やかに微笑んでいた。
「えぇ、カレッセン公」
ヴァリスはナイフを置いた。
「お会いして間もないのに、このような願いをするのは恐縮なのですが、
こちらとしてものっぴきならない事情を抱えておりますの。
どうか、わたくしの願いを聞き入れてはいただけませんか」
「どうぞ、仰ってみてください」
「ティアズリリーの秘薬を譲っていただきたいのです。
量はごく少量———このゴブレットを満たすほどで———それで充分ですわ。
実は公にはされておりませんが、
わたくしには病弱な異母弟がおりまして———わたくしは、何としてでも弟を救いたいのです」
カレッセン公は形のよい眉をわずかに上げる。
驚いているようにも、思いがけない話に好奇心を刺激されたと云うようにも視えた。
少なくとも怒りを買った様子はないようだったが、
内心はどう思っているのだろう……とヴァリスはざらつく心を抱えて彼の両眼をみつめた。
ルカスいわく、ティアズリリーには万能の秘薬としての重要性が非常に高く、
同じ質量の黄金の数倍以上の価値と希少性を誇る花だと聴いている。
ヴァリスがナイフを動かす手を止めた。
花の飾られた皿から視線を上げ、カレッセン公と瞳を合わせる。
彼は穏やかに微笑んでいた。
「えぇ、カレッセン公」
ヴァリスはナイフを置いた。
「お会いして間もないのに、このような願いをするのは恐縮なのですが、
こちらとしてものっぴきならない事情を抱えておりますの。
どうか、わたくしの願いを聞き入れてはいただけませんか」
「どうぞ、仰ってみてください」
「ティアズリリーの秘薬を譲っていただきたいのです。
量はごく少量———このゴブレットを満たすほどで———それで充分ですわ。
実は公にはされておりませんが、
わたくしには病弱な異母弟がおりまして———わたくしは、何としてでも弟を救いたいのです」
カレッセン公は形のよい眉をわずかに上げる。
驚いているようにも、思いがけない話に好奇心を刺激されたと云うようにも視えた。
少なくとも怒りを買った様子はないようだったが、
内心はどう思っているのだろう……とヴァリスはざらつく心を抱えて彼の両眼をみつめた。
ルカスいわく、ティアズリリーには万能の秘薬としての重要性が非常に高く、
同じ質量の黄金の数倍以上の価値と希少性を誇る花だと聴いている。