砂糖菓子の鳥籠 Ⅰ【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】
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「貴殿がカレッセン公ですのね」
「はい、アリエ殿」
(この人がカレッセン公……!)
彼女は戸惑いが表情を介して表に出てしまわぬよう、こっそりと唇をかむ。
同時に、先刻のエーファンの言葉が頭のなかで反響する。
三度もの結婚。三度もの死別。
二度目の妻を三十歳で亡くし、三度目の妻とは十年連れ添い、
その五年後にその人に先立たれ………。
けれど、それでは計算が合わない。辻褄が合わない。
(だって、この方は若く見えるなんて次元じゃないもの……!)
そう——二十代の青年にしか見えない。
妖しくひかるすみれ色の瞳。冴え冴えとした冬の月のような白い肌。
妥協を許さぬ天の職人の手で創り出されたような繊細な美貌には、
目に視えぬ退廃のベールを纏ったような、甘く優しい翳りがある。
泡立つ波に似た繊細なレースで首元を飾り、
耳には紫にひかる涙型の宝石を下げ、
やや長いアッシュブロンドは黒曜の細いリボンで後ろにひとつに結われている。
装いは優美で女性的とも言えるが、肩幅があり上背もあるので軟弱な印象はない。
その身を包んでいるのは
ゆらめく蝋燭の炎に微妙な光沢と移ろいをみせる漆黒のアンサンブル——月の廃園の正装だ。
「はい、アリエ殿」
(この人がカレッセン公……!)
彼女は戸惑いが表情を介して表に出てしまわぬよう、こっそりと唇をかむ。
同時に、先刻のエーファンの言葉が頭のなかで反響する。
三度もの結婚。三度もの死別。
二度目の妻を三十歳で亡くし、三度目の妻とは十年連れ添い、
その五年後にその人に先立たれ………。
けれど、それでは計算が合わない。辻褄が合わない。
(だって、この方は若く見えるなんて次元じゃないもの……!)
そう——二十代の青年にしか見えない。
妖しくひかるすみれ色の瞳。冴え冴えとした冬の月のような白い肌。
妥協を許さぬ天の職人の手で創り出されたような繊細な美貌には、
目に視えぬ退廃のベールを纏ったような、甘く優しい翳りがある。
泡立つ波に似た繊細なレースで首元を飾り、
耳には紫にひかる涙型の宝石を下げ、
やや長いアッシュブロンドは黒曜の細いリボンで後ろにひとつに結われている。
装いは優美で女性的とも言えるが、肩幅があり上背もあるので軟弱な印象はない。
その身を包んでいるのは
ゆらめく蝋燭の炎に微妙な光沢と移ろいをみせる漆黒のアンサンブル——月の廃園の正装だ。