砂糖菓子の鳥籠 Ⅰ【君という名の鳥籠 予告中編 ♟】
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貴族でない私の眼からみても、
カレッセン公のお仕込みがよほどいいとわかる、とヴァリスは関心した。
あるいはエーファンの教育がいいのかもしれない。
「エーファン、奥方様はこのお席にはいらっしゃらないのかしら?」
食事をはじめながら、彼女は先刻から気になっていたことを尋ねた。
「挨拶をしたいと思うのだけど、公爵夫人の御姿をお見かけしていないから」
「奥様はいらっしゃいません、アリエ様」
エーファンは微笑んだ。
「公爵夫人は既に亡くなられました。
現在、主人のカレッセン公は独身でいらっしゃいます」
「まぁ、そうだったの。ごめんなさいね、わたくしったら」
「いいえ、どうぞお気になさらず。
最後の奥様が亡くなられたのはもう五年も前のことなので、
旦那様も気にしておりませんゆえ」
ヴァリスはきょとんとした。最後の奥様?
「皆様のお部屋に飾っている肖像画ですが、あれはご覧になりましたか」
「えぇ。百合の銀細工の首飾りをした、
とても綺麗な女性たちの描かれた絵でしょう」
「あれが亡くなられたご夫人がたでございます」
「え? 三人とも……?」
「はい。最初の奥様は旦那様が十九の時に結婚なさった方です。
お美しい方だったのですが、残念ながらお産がうまくいかず、
若くして亡くなられました。
二番目の奥様はその八年後に再婚された方ですが、熱病に罹って儚くなられました。
それからしばらく一人身で過ごされたのち、
三人目に迎えられた奥様とは十年連れ添われましたが、
このお方も五年前にやはりご病気で………。
皆様素晴らしい女性だったのですが、
ご病弱でいらっしゃいまして、長寿が叶いませんでした。
主人も私も大変残念に思っています」
まぁ、と言ったきりヴァリスには言葉もなかった。
三人もの妻に次々先立たれるなんて、と彼女は思わず同情してしまう。
カレッセン公のお仕込みがよほどいいとわかる、とヴァリスは関心した。
あるいはエーファンの教育がいいのかもしれない。
「エーファン、奥方様はこのお席にはいらっしゃらないのかしら?」
食事をはじめながら、彼女は先刻から気になっていたことを尋ねた。
「挨拶をしたいと思うのだけど、公爵夫人の御姿をお見かけしていないから」
「奥様はいらっしゃいません、アリエ様」
エーファンは微笑んだ。
「公爵夫人は既に亡くなられました。
現在、主人のカレッセン公は独身でいらっしゃいます」
「まぁ、そうだったの。ごめんなさいね、わたくしったら」
「いいえ、どうぞお気になさらず。
最後の奥様が亡くなられたのはもう五年も前のことなので、
旦那様も気にしておりませんゆえ」
ヴァリスはきょとんとした。最後の奥様?
「皆様のお部屋に飾っている肖像画ですが、あれはご覧になりましたか」
「えぇ。百合の銀細工の首飾りをした、
とても綺麗な女性たちの描かれた絵でしょう」
「あれが亡くなられたご夫人がたでございます」
「え? 三人とも……?」
「はい。最初の奥様は旦那様が十九の時に結婚なさった方です。
お美しい方だったのですが、残念ながらお産がうまくいかず、
若くして亡くなられました。
二番目の奥様はその八年後に再婚された方ですが、熱病に罹って儚くなられました。
それからしばらく一人身で過ごされたのち、
三人目に迎えられた奥様とは十年連れ添われましたが、
このお方も五年前にやはりご病気で………。
皆様素晴らしい女性だったのですが、
ご病弱でいらっしゃいまして、長寿が叶いませんでした。
主人も私も大変残念に思っています」
まぁ、と言ったきりヴァリスには言葉もなかった。
三人もの妻に次々先立たれるなんて、と彼女は思わず同情してしまう。