第1章 はじまりの夜
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導かれるままに廊下を進んで。
「ミヤジ、待って、………待ってよ!」
その声に漸く靴の音が止む。
「どうしたの? あなた……様子が、」
目を合わせようとしないその頬にふれ、強いて瞳を合わせる。
少しだけ冷えた眼を、それでも怯むことなくまっすぐに見返した。
「主様、あまりルカスに心を許さないでくれないか」
「え……?」
戸惑う瞳でみつめる。
そのおもてから指を離し、その袖口をつかむ。
その指に彼のそれがふれ、さらに言葉を重なった。
「あの男は、なかなかに食えない男でね。
貴女のことも、なにか別の思い入れがあるように見えるんだ」
柔らかく諭すような口調。
それだけに彼が本気で自分を案じてくれているのだと悟った。
(それでも……私は、)
その両眼を見返して、彼女は唇をひらく。
「さっきは、助けてくれてありがとう」
でも、とつかんだ指先を解く。そして微笑んで見せた。
「信用できる人なのか、それともそうでないのかは、私自身で見極めるの。
自分自身でみて、ふれて、感じたことが、私にとっての真実だよ」
微笑って、やんわりと拒絶する。
危ういほどに透明で、それでいて針のような棘が滲むような表情だった。
「貴女は強いのだね」
心からの言葉に、一瞬にしてその瞳が混濁に呑まれる。
「いいえ、私は強くないよ。———そうあるように見せかけているだけで」
告げながら、その両眼が悲しみに染まる。
唇はみずからを嘲るように、苦い笑みを刻んでいた。
(だって、父さんと母さんは………、)
「主様……?」
戸惑う瞳に「大丈夫よ」と微笑いかける。
「何でもないの。それより……早く戻ろう」
先刻と同じ表情、同じひかりを宿す瞳。
それでもたしかに存在する突き放すような冷たさを滲ませれば、
彼は唇をひらきかけ、そして再度とじた。
「ミヤジ、待って、………待ってよ!」
その声に漸く靴の音が止む。
「どうしたの? あなた……様子が、」
目を合わせようとしないその頬にふれ、強いて瞳を合わせる。
少しだけ冷えた眼を、それでも怯むことなくまっすぐに見返した。
「主様、あまりルカスに心を許さないでくれないか」
「え……?」
戸惑う瞳でみつめる。
そのおもてから指を離し、その袖口をつかむ。
その指に彼のそれがふれ、さらに言葉を重なった。
「あの男は、なかなかに食えない男でね。
貴女のことも、なにか別の思い入れがあるように見えるんだ」
柔らかく諭すような口調。
それだけに彼が本気で自分を案じてくれているのだと悟った。
(それでも……私は、)
その両眼を見返して、彼女は唇をひらく。
「さっきは、助けてくれてありがとう」
でも、とつかんだ指先を解く。そして微笑んで見せた。
「信用できる人なのか、それともそうでないのかは、私自身で見極めるの。
自分自身でみて、ふれて、感じたことが、私にとっての真実だよ」
微笑って、やんわりと拒絶する。
危ういほどに透明で、それでいて針のような棘が滲むような表情だった。
「貴女は強いのだね」
心からの言葉に、一瞬にしてその瞳が混濁に呑まれる。
「いいえ、私は強くないよ。———そうあるように見せかけているだけで」
告げながら、その両眼が悲しみに染まる。
唇はみずからを嘲るように、苦い笑みを刻んでいた。
(だって、父さんと母さんは………、)
「主様……?」
戸惑う瞳に「大丈夫よ」と微笑いかける。
「何でもないの。それより……早く戻ろう」
先刻と同じ表情、同じひかりを宿す瞳。
それでもたしかに存在する突き放すような冷たさを滲ませれば、
彼は唇をひらきかけ、そして再度とじた。