第4章 病魔 前編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(彼らはその魂を称えられるべき存在であって、
憎しみを受けるこの現状こそ不条理なのですから)
けれど眼前の主君は、彼らのことをあまり快く思っていない。
それどころか、みずからの生家を差し置き、
事実上この世界の全ての権力を掌握しているグロバナー家を、心から憎んでいるのだ。
「だが………、」
灼けるような激情を映したまま、その瞳が冷笑に染まる。
「小娘だからこそ利用価値があると云うものだがな」
唇を歪める。不穏な響きを含んだその発言に、思わず柳眉をひそめると。
彼は口角をつり上げた。
「当然だろう。価値ある者は極限まで利用し切り捨てる。
そうして私はこのサルディス家の当主として在りつづけてきたのだからな」
双眸はその瞬間を思い描いているかのように、愉しげに輝いている。
「…………………。」
ユーハンの瞳にわずかな憤りが映し出され、奥歯をかんで握りつぶす。
そのさまに嘲るような笑みを浮かべながら、尚も続けた。
「不満ならば反逆するか?
貴様の故郷がどうなるか———それを見届ける度胸がお前にあるのなら、だがな」
「承知致しました」
内心のさざめきを強いてかき消す。
けれどそのこころに染みのごとく滲みはじめた、複雑な思考までは上塗れなくて………。
(密偵であるあの兵士にお伝えしなくては)
みずからの指揮する部隊に潜入しているひとりの男。
元はグロバナー家に連なる人物ながら、
殊更に自分を慕ってくれるその男を、ユーハンは心から信頼していた。
「ふん、まぁいい。くれぐれも私を裏切ってくれるなよ」
紅玉の瞳が細められ、冷えた眼差しが彼を貫く。
その両目をみつめながら、胸に手を置いた。
「はい、フブキ様」
そのさまに満足したように唇を歪め、帳をしめた窓のほうへと視線を移す。
夕陽に染まるその横顔には優越が滲み出るようで、この世の誰より醜悪に見えた。
憎しみを受けるこの現状こそ不条理なのですから)
けれど眼前の主君は、彼らのことをあまり快く思っていない。
それどころか、みずからの生家を差し置き、
事実上この世界の全ての権力を掌握しているグロバナー家を、心から憎んでいるのだ。
「だが………、」
灼けるような激情を映したまま、その瞳が冷笑に染まる。
「小娘だからこそ利用価値があると云うものだがな」
唇を歪める。不穏な響きを含んだその発言に、思わず柳眉をひそめると。
彼は口角をつり上げた。
「当然だろう。価値ある者は極限まで利用し切り捨てる。
そうして私はこのサルディス家の当主として在りつづけてきたのだからな」
双眸はその瞬間を思い描いているかのように、愉しげに輝いている。
「…………………。」
ユーハンの瞳にわずかな憤りが映し出され、奥歯をかんで握りつぶす。
そのさまに嘲るような笑みを浮かべながら、尚も続けた。
「不満ならば反逆するか?
貴様の故郷がどうなるか———それを見届ける度胸がお前にあるのなら、だがな」
「承知致しました」
内心のさざめきを強いてかき消す。
けれどそのこころに染みのごとく滲みはじめた、複雑な思考までは上塗れなくて………。
(密偵であるあの兵士にお伝えしなくては)
みずからの指揮する部隊に潜入しているひとりの男。
元はグロバナー家に連なる人物ながら、
殊更に自分を慕ってくれるその男を、ユーハンは心から信頼していた。
「ふん、まぁいい。くれぐれも私を裏切ってくれるなよ」
紅玉の瞳が細められ、冷えた眼差しが彼を貫く。
その両目をみつめながら、胸に手を置いた。
「はい、フブキ様」
そのさまに満足したように唇を歪め、帳をしめた窓のほうへと視線を移す。
夕陽に染まるその横顔には優越が滲み出るようで、この世の誰より醜悪に見えた。