｢ほお………。｣

興味を引かれた様子で、その瞳がユーハンをとらえる。

じろじろと検分するような眼差しを、彼は視線を解くことなく正面から受け止めた。



｢お前がそれ程興味を抱くとは珍しい｣

真意を問うごとく見返され、「そんな事はありません」と落ち着き払ってつぶやいた。



｢私は貴方の腹心であり、それ以前にこのサルディス家の一兵士なのですから｣

感情の視えぬフェアリーストーンの瞳。

どれ程見交わしても淀むことのない双眸は、透えぬヴェールに覆われていた。



｢そうだな。お前は私の所有物だ｣

唇ではそう口にしつつも、両目が凍てついていく。



つまらないと言わんばかりに眼を眇られ、

ユーハンは再度胸のなかで広がっていく混濁を強いて上塗った。



悪魔執事の力の解放を行うことのできる、唯一にして無二の存在。



彼女の来訪で、この世界は強大な変革を遂げた。

それまでの世界の覇権と人々の命の価値の主導権を、百八十度反転させたのだ。



けれど救世主である筈の彼らは人々から忌み嫌われ、

さらには四貴族家に連なる者たちからも、「依頼」と称し便利屋のように扱われている。



けれどユーハンは彼らが迫害される理由を知りつつも、

そのような扱いを受けるに値しないと心から感じていた。