百合の時期にはやや早い


「なぁそう言えば、なんで仕事……引継ぎなんてしてたん?」
 メッセージへの返事をその場で返してくれた彼女の提案に乗っかって、今日はそのまま智夏の家でのお家デートを楽しむことになった。今は智夏の部屋のベッドの上だ。
 無事に智夏の愛車を脱出させた優利は、『帰って寝る。アホらしい』と言って帰っていった。その口元に笑みが浮かんでいたことは、きっと智夏だってわかっている。
「あ? それ誰から聞いた?」
「えっと、昌也くんから……優利さんから聞いたって」
「あー、だからあいつ私の体調やけに心配しとったんか。自分も勘違いしとるやんけ」
「勘違い?」
「今って、季節何?」
「えっと、春やけど……?」
「春は進級、進学の季節やろ? 年が上がるってことは、会社にも新しい人が入ってくるやろ? と、いうことは?」
「……単純に、『普通の引継ぎ』?」
「そういうことや。いつまでも同じ担当やと、悪いことしてまう人もおるからなー」
 ゲラゲラと笑う恋人は、多分こんな表情をしていても、かっこいいと思えるくらいには、碧は彼女にぞっこんなのである。


 END
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