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ツキウタ。

霜月隼の観察力は伊達じゃない【隼陽】

霜月隼の観察力は伊達じゃないことを実感する葉月陽の話です。

★☆★

「お疲れ様でしたー!」
6人の声が揃う。
「それじゃ、解散。皆、よく頑張ったね」
そう言って、隼が海を除いたメンバーの頭を撫でていく。
仕事が嫌だとか、何だかんだ言っておきながらやり出したら完璧にこなすから、憎めない。
うつむく俺の頭をポンと乗せてきた。
「陽も。お疲れ様、かっこよかったよ」
やっぱりリーダー名乗るだけはあるよな…今日の撮影、意識せざるを得なかった。
もっと、俺だって、俺なりに魅力があるはずだ。隼を見ていると、自分には足りないものばかりだと思うことがある。
普段はそんなこと感じないのに、仕事を一緒にしていると、意識してしまう。
「さんきゅー、隼。魔王様は輝いてたな」
「ふふっ…そうかな。陽には負けるよ」
そういうことを言うだろ。
「お前は人の肩持ちすぎな。俺、今日は微妙だったけどな」
「…」
耳元で囁くように言われた言葉に固まってしまった。
「ほら、行くよ」
促されて、歩く。
嘘だろ…。走って、隼を抜かし、夜と海が話してる間に強引に入る。
「よーる、何話してんの」
「お、陽か。隼は?」
「あとから来る」
「…あ、そう」
短く答えると立ち止まって、隼を待つと言う海に手を振り、夜と並んで歩く。
「…陽、なんかあった?」
ギクリとする。
「な、何が〜?」
あ、声、裏返った。
「明らかに変だね」
「…まぁ、ちょっとな」
「俺に話せる?」
「…んー、大したことないんだけどさ、隼にさっき、いつもと違うって言われてさ。仕事したくないってのが口癖の人が人のことはすげぇ見てるよなと思ってな」
「へぇ、そっか。たしかにそうだね、隼さんには俺もドキリとするよ」
「お前もか」
「うん…魔王様だからね(笑)隅々まで見られてるのかも」
「うわ、こえ〜」
「あはは(笑)帰ったら今日は俺が夜ご飯作るね。気分がいいから」
「夜こそなんかあったんだ?」
「えー?何もないよ。陽が悩み事、話してくれたのが嬉しかったんだよ。話さないでしょ、そういうの。よっぽどグサッときたのかな?」
あ、それだ。
図星だった。夜に悩み事をポロリと話すなんてほぼない。逆に夜の悩みの方が多いからだ。俺なんか悩んでられないって勝手に思ってたし。
「うるせぇ」
「はいはい」
共有ルームで分かれ、部屋に入る。
荷物を置いて、ベッドにダイブする。
…さっきのなんだったんだ。
隼に言われた言葉が頭を回る。

「分かってたんだね。手、抜いたのかな?」

手を抜く?俺が?
…嘘だろ。
「あぁぁぁぁぁぁ!!!!くっそっ!!」
「そんなことしたら痛がるからやめてあげて?」
穏やかな声が聞こえて、慌てて起き上がる。
「し、隼…いつ入った?」
「あれ?さっきだよ。叫んでたみたいだから気づかなかったみたいだね」
びっくりした…。
言われて気づく。隼が「これも部屋に飾って置いてね」とくれた邪魔だと思ってたけど、いまではすっかり馴染んだデカツキウサが殴られて可哀想な形になっていた。
「陽は僕の言葉なんかでは左右されないんだと思っていたけど、意外と繊細なんだね」
ぽんぽんと頭を撫でられ、お得意の抱擁までされる。
いつもなら暑いといって突き放すのに、今日はそんな気分にもならなかった。
されるがままになり、隼の鼓動をただ聞く。規則正しい心音が心地いい。
「お疲れモードだねぇ、よしよし」
急に恥ずかしくなってきて、離れようとしたが、ガッチリホールドされてしまう。
「隼!」
「だーめ。弱ってる陽は珍しいからね。…陽は手抜いてないよ。ただ、他人を気にすることないんだから、陽は陽でいいんだよ。反省はあとからしても大丈夫」
「なんか、隼にそういうこと言われると本当にダメダメみたいに思えてくるな」
「え〜?酷いなぁ」
いつの間にか、わだかまりは消えていた。
「隼、もう平気だって」
「じゃ…これだけ…」
頬に手を添えられて、何をされるか分かれば、パッと横に顔を逸らす。
「え。…こっち向いて?」
「いーや」
「頑固だね…それでもいいよ」
手を取られ、手の甲にキスをされて、一気に熱が上がる。それは俺の柄じゃねぇだろ…!
「分かったよ、好きにしろよ…」
目を合わせて見つめ合う。
しばらくそうして、俺が折れて目を瞑る。
隼からされるキスはいつも、優しくて、俺が眠りから覚めない日がきても、隼のキスで眠りから覚めそうな、そんな気がするんだから俺はこいつとのキスが特別好きなんだろう。隼には絶対に言わないけどな。

後日談①

後日談②

END
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