12.追憶
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「些細な欠員だったとはいえ、きちんと各準備が進んでいるのは及第点だね。報告が遅れているいくつかの企画店も原因は運営委員の働きではなく、企画店側の都合によるものばかりと」
心底つまらなさそうに、報告に対する労いの言葉をちくちく寄越してくるのは、お馴染み生徒会副会長だ。
曲者揃いの生徒会室への連絡係としてすっかり定着してしまっていた朱音は、ほんのり腹痛を気配を感じながら(体調起因ではない)、真摯に聞いているつもりだ。
副会長こと半兵衛がつまらなさそうにしているのは、一重に運営委員の過失が無いせいだ。本当の意味で朱音にちくちく出来ないからだろう。
正直な所、これまでは生徒会とのコミュニケーションが上手くいかず、学園祭のようなイベント直前にバタつく事もあったそうだ。今回朱音が秀吉と昔馴染みであるお陰で密なやり取りが可能となり、例になく連携が取れている事は大いなる功績であるはずなのだが。
「助かっておるぞ、ろく。具合ももう良いのか」
「はい、お陰様で」
「だろうね。僕の後輩から差し入れを貰ったんだから元気にもなるさ。あの蜂蜜漬けは本来僕のなのにね」
当の後輩がこの場に居ないのをいい事に、素敵な笑顔の無駄遣いをしながら抗議してくる半兵衛に思わず顔が引き攣らないように努める朱音。
半兵衛の後輩こと三成がこんな話を聞いてしまえば……さぞ狼狽える姿が目に浮かぶ。
「多めに作って、取っておいた物だったそうですが…」
「勿論そんな事はわかっているとも」
三成くんが僕を蔑ろにするはずがないじゃないか、と。
毎度半兵衛との会話はこんな調子だが、病み上がりでも容赦なしというか、病んだからこそのこの言いようというか。
何を言っても嫌なコースに打ち返してくるので、流石の朱音も彼にだけはやや苦手意識を抱いている。
親愛なる秀吉の手前、これでも抑えて物申しているであろう半兵衛の表情には余裕が伺える。
「……ではまた、本準備期間に入った時に伺いますね」
「よろしく。しっかり励んでくれたまえ」
今回も長居は出来ず、そそくさと生徒会室を出た朱音は制服のポケットに意識を向ける。
(……多分竹中さんには内緒で、キャンドルを見せてくれたと思うんですよね。秀吉さんに直接お返しするのは難しそう…)
淡いオレンジ色のキャンドルは朱音の元にあるままだ。
こうなったら三年生の兄に頼んで放課後の前に返してもらうしかないのかもしれない。
思わず鈍い溜息が出る。最たる曲者、白ランちくちく美男子に手を焼かされている朱音だった。