11.お礼※
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「Thanks、朱音」
お見舞い品の礼を言いに行ったはずが、逆に感謝の言葉を掛けられた朱音はどういう事かと首を傾げた。
現在放課後。
片倉菜園付近にて、合同企画店の店内レイアウトの最終確認を行っているところだ。
運び込まれ始めているテーブルや椅子達の合間を縫って、現・野球部キャプテンの政宗が朱音の前に立っている。
「最初はな、小十郎の奴が最後の年で、やりたそうにしてたからコラボを承知したんだが」
そうだったのか。
サッカーとの合同出店の直接交渉は幸村と一対一で行ったはずだが、OKが出た細かな背景は知らないでいた。
「俺とアイツはrivalだ。手を取り合うなんざとんだ寝言だと思っていたが…、一度くれぇは手を組んで学園TOPを掻っ攫うのも悪くねぇな、ってな」
『ライバルたる政宗殿と手を取り、共に準備を進めて行くのも、中々どうして面白うござる!』
先日幸村もそんな事を言っていた、なんて思い出した朱音は、二人に似通った部分があるのだろうと感じた。
仮に同じ部だったら、立場が違ったのならば、気の合う友人同士だったのではないだろうか。いや、同じだったとしても最終的にどちらが強いか等、張り合いは絶えないかもしれないが。
「とんでもありません。当日楽しみにしていますね」
「謙虚だな。真田幸村が気に掛けるのもわかるかもしれねぇな」
「真田くん?」
「おっとSecret案件だったか?」
ヒヒ、と浮かべた意地の悪そうな笑顔はきっと眼前の朱音ではなく、幸村に向けられたものなのだろう。
「風邪でお前がdownしたと知った時のアイツの狼狽え様といったら…」
「政宗殿!何をされておられる!」
絶妙なタイミングで、血相変えた幸村が政宗と朱音の元へ駆け寄って来た。
ヘラヘラ笑って朱音に突っかかる政宗を見て嫌な予感がしたようだ。
「何もしてねーよ、アンタが面白ぇって話してたくれぇだよ。な、朱音」
「は、はい、そうらしいです」
「無理に合わせずとも良うござる朱音殿!佐助は何処におる!ついておくよう言っておいたというのに…!」
「謎すぎるrelationshipなんだよ、アンタら」
先日に続き、朱音に対し過保護気味な気遣いをしてみせる幸村に政宗は眉を顰める。
あの真田幸村が女性に対し挙動不審になること無く話しかけるなんて、政宗が見てきた中では朱音が唯一の相手。異性の認識を超える程の関係なのだろうか。さながら兄妹のような感覚かもしれないが、朱音には本物の兄もいる事だし…。
「某の大事な友人でござる!」
「一応それがしっくり来るのはわかってるんだがな」
どうにも腑に落ちない政宗だが、幸村に言及しようにもこれ以上収穫が無いのが分かりきっているので、今回もモヤモヤが残って終わるのだろう。
傍らの朱音も特段態度は変わることもなく、手元のバインダーに何かを書き込んでいる。いよいよ学祭直前の準備期間に入るため、各企画店の最終チェックに巡回している最中だ。
「猿飛さん、今日は印刷物のチェックに回っていますよ。かすがさんは新体操部の練習に行ってて、風魔さんだけでは量が多いとの事でして、」
「む、それなら致し方なし……一人で大事ありませぬか?」
「大事なしです。ありがとうございます」
いつもの調子で笑ってはいるものの、病み上がりである事には変わらない。運営委員自体も人手が足りていない為、一人でやらざるを得なかったのだろう。
それならば幸村も共に行こうとも考えたが、生憎合同企画店の準備に余裕はなく、サッカー部代表の自分が離れる訳にはいかないと、グッと堪えた。
「本当に大丈夫ですよ。ここが終われば、あとは室内の企画店だけですし」
「それならば良いが…」
「そんなに心配なら俺がついて行ってやるぜ。こっちは小十郎が居ればNo problemだろうしよ」
「時に政宗様。貴方様は生徒会や演劇部相手に、穏便にやり取りする事は出来るのでございますか?」
「………無理だな。お前結構すげぇな、朱音」
「それはどちらかと言えば、すぐに喧嘩腰になる政宗様が…」
「Shut up!小十郎!」
「さて、きっとお前の顔を見たがってる連中も多いことだろう。行ってこいよ」
「……はい!行ってまいります、片倉さん!」
ギャー!と噛み付く勢いで文句を言う政宗を制しながら、小十郎が手を振る。
最後まで心配そうにしている幸村にもしっかり挨拶をすると、朱音は次の場所へ歩き始めた。