11.お礼※
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「おはようございます、猿飛さん、さななくん!」
通学路にて。小走りで駆け寄りながら挨拶する病み上がりの声を聞いて二人は振り返った。
「お、復活したんだね。良かったね、さななの旦那」
「うむ!……む?」
不織布マスク越しにも朱音の頬が膨れるのがわかった。
ちょっと噛んだだけなのに即拾われてしまった。やはり兄の言う通りこの新聞部部員、侮れないのかもしれない。
その兄は駆け出した妹を後ろで見守っているようだ。
「ふふ、お兄さんそっくり」
「佐助、からかってやるな。朱音殿が困っておる。して、もう具合は良いのでござろうか」
「はい、熱も下がって、諸々の症状も治まりつつあります。それに先程また差し入れをいただきました」
今朝一番の嬉しい出来事を披露すべく、朱音は鞄にしまっていた物を取り出した。
何かの瓶詰めだ。敷き詰まった白い物体が淡い黄色の液体に浸かっている。
「あ、それもしかして蜂蜜大根?」
「いかにも、です。三成さんからいただきました!」
曰く、いつなんどきでも半兵衛様にお渡しするべく、冬シーズンは常備&量産する事にしたという妙薬のお裾分けだ。
以前の失敗を活かし、朱音が受け取った物はすぐに飲んでいい状態との事だ。学園に着いたら早速少し飲んでみるつもりだ。
「へぇぇぇ〜…あの生徒会の番犬みたいな石田の旦那がねぇ、」
「真っ直ぐなお人柄なんだと思います」
手乗りサイズの瓶を持って笑顔を浮かべる朱音。キャンドルの件もあるし、今日は必ず生徒会室に顔を出しに行くのだろう。
まだ本調子ではないようだが、それ以上に気遣ってくれた周りへの感謝や学園祭の準備が楽しみで仕方ないらしい。
「佐助、お前が見ていてやるのだぞ」
「お?」
「運営委員同士、共にいる事が多いのだろう。朱音殿は病み上がりゆえ。俺も企画店の準備が落ち着いたら手伝いたいが……」
差し入れをしてくれた方々の皆様にもお礼して回らなきゃ!と一人で気合いを入れる背中を眺める幸村が静かに告げた。
てっきり一緒になって朱音を鼓舞するものと思っていたものだから、正直幸村らしくない物言いだ。疑問そうな佐助の視線で、幸村も自身の言動の違和感に気づいたようだ。
「……いや、なんだろうな。頑張りすぎてしまう気がしてな……何となく、」
「ふ〜ん、そう。ま、突っ走る御方を見守るのは慣れてるんでね。お易い御用だぜ」
「任せたぞ」
ほんのり皮肉を交えた言葉にも気づきながらも、敢えて幸村は佐助に託した。
お前なら上手くやるだろう、と。何処まで自覚しているのかわからない、信頼を寄せる類の笑顔を浮かべていた。