こがらしの記憶
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瞼が開く。
気だるさを感じながらゆっくり瞬きを繰り返した。
「…ちびちゃん……」
幼くも強かな彼は傍にいない。
それはすぐにわかった。どうしようもない寂しさが込み上げてくる。
「おい、何があった…!」
ふと声が聞こえた方に視線を向けると彼女の兄が血相を変えて部屋のドアの所に立っていた。
「兄、上……?」
そんなに慌ててどうしたのかと聞く前に兄が駆け寄ってきた。
カサリ、と兄の足元から音がした。支えられながら上体を起こす際についた自らの手元からも同じ音が。
「木の葉……?」
どうやら自分を中心に少しだけ湿った枯葉が大量に敷き詰められるように散っている。
室内で空調も入れているから窓も開いていないはずなのにそれは異様な光景だった。確かに兄も驚くはずだ。
「なんだ…?強盗でも来たのか?」
警戒心を抱きながら兄は部屋を見渡すが枯葉が散っている事以外、特に異常は見受けられなかった。
「家に戻ってから何かあったか?」
「いえ……、多分ずっと眠ってました、」
「…昼、食べてないのか?」
「そういえば……。今、何時…?」
「18時回っている」
部活から帰ってきた兄がいるのだからそんな時間でもおかしくはない。
午前に兄の忘れ物を届けに学校へ行って、戻ってきて居間で休んでいたらそのまま……という事だろうか。
なんとも不思議な出来事だった。
彼女は手に触れた1枚の枯葉を取った。
彼は無事だろうか。元気になっただろうか。
何日も共に過ごしたはずだけれど、家で眠っていたのは約半日。長い長い夢だったのだろうか。でも記憶は鮮明で、枯葉もここにあって、触れられている。
ならばまたどこかで会えるだろうか。
会いに行きたい。しっかり者だけど実は寂しがり屋で、それでもひとりで懸命に生きていたあの子に。
(ごがらしの記憶 終)