11.お礼※
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「行かないでください、置いてかないで〜〜っ」
「………」
普段はベッドにあるはずの毛布で身体をくるみ、端をズルズル引きながら玄関まで着いてきた妹に、忠朝は静かに溜め息をついた。
「放課後だけ学園行くのって、アリですか?」
「普通逆だ」
授業だけ出て放課後はさっさと帰る、それが体調不良の定石だろうに。
本来寡黙だが、思わず突っ込んでしまった忠朝に朱音はぷくぷく文句垂れている。
「もうすぐ学園祭なのに…、まだ準備途中なのに…出店者や業者とのやり取りもまだあるのに、」
「寝てろ」
「やです、喋るの止めるともっと鼻詰まっちゃうんだもん〜〜〜!」
風邪っぴきだというのに声だけは元気だ。鼻詰まりのため多少くぐもっているが。
咳はそれほど出ていないが喉に違和感があるようで、時折小さく咳払いをする。
「父上ならもっといっぱいお話してくれるもん〜〜っ」
「あれは親馬鹿なだけだ」
「父上はおバカじゃないです!お優しいんです!」
「うるさい寝てろ、もう行く」
「……ところで兄上、本当に出るんですね」
「何に」
「島津先生と家康くん達とのラップ発表……出演者リストに兄上の名前も書いてあったので、」
件の名前を聞いた途端、バァン!と壊れるくらいの勢いで玄関の扉を開け放ち、忠朝は学園の方へ駆け出して行った。
登校時間まではまだ余裕あり、もう少し甘えてやろうと思っていたのに……振る話題を間違えてしまったようで、朱音はちょっとしょんぼりした。
それでも学園祭当日に倒れるよりはマシだろうか。
扉を閉めると静かになった家に寂しさを覚えつつ、大人しく部屋で眠る事にした。