10.結末 ※戦国パートのみ※※※
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銀の閃きが見えた。
躊躇いなく松永の左腕に突き立てられた。
「…何…?」
不意を突かれた松永が驚きの声を上げる。
丸腰になったはずの少女の手には小刀が握られていた。いや、刀ではない。
「さ、佐助の……手裏剣……ッ!」
離れた位置でも幸村にはわかった。
あれは佐助が普段から使っている大手裏剣の欠片だ。
先の戦闘で破損したと思われる本来三つの刃で構成される内の一片を手にしていた。柄代わりに握っている、特徴的な歪曲した鉛の形状は、幸村にとってあまりに見慣れた代物だった。
『小十郎はどうした!言えッ!』
『佐助は!我等が武田の副将は…!?』
『卿等には…炭を眺める嗜みでもあるのかね?』
ならば、やはり佐助は。恐らく片倉殿も。
だからこそ朱音は……!
どんなに強く制されてもやはり聞き入れる事は出来ない。雷に灼かれようと構わず幸村は駆け出した。
だが、もう時はほんの僅かで十分。護るべき優しい炎が届く前に決着する。
松永の左腕を貫いた手裏剣の欠片へ、再び朱雷を流す。これまでで一番の威力だ。今度こそ惜しむ必要はない。
使え、使い切れ。使い尽くせ。身体も、魂ごと使い果たせ!
護れ。守れ。何としても、最期の約束を………!
「………してやられたか、」
左腕の先、意地の悪い糞餓鬼じみた笑顔に、松永も苦笑する。
刃を押し込む、まだ押し込む。最早ちぎれないのが不思議なくらい強烈な電流が両者を覆い、やがて身体の外まで溢れ出す。
朱雷が延びて来て、先程までの柱の様に進路を覆われたが、幸村はもう引く気はなく強引に二槍で道を拓いて行く。
それより先に決着を。
さぁ、お前の負けだ。この『乱世の産物』と共にここで死ぬんだ。
首を絞められながらも、饒舌な目が勝ち誇る。
刃と雷に阻まれ、松永は朱音を振りほどく事が出来ない。
このまま灼き切られるか?それとも無様に斬られ、討たれるか?
(………否、)
死に様は自分で選ばせてもらおう。どうせ眼前の小娘も承知の上だろう、と。
「死体は……残さない主義、でね」
今度こそ、松永の手に収まる宝剣が左手の導火線を切った。
何度も優しい炎で道を照らしてくれた幸村。
生きる事に迷い続けていた少女の永遠の憧れだ。
どうかこの先も、真っ直ぐ進んで行けるように。
そして、眩しく赤い視界の先に彼を想う。
彼と交わした言葉、感じた全て、あたたかさにもその悲しさにも想いを寄せる。
痛みよりも、苦しさよりも、この想いが勝る。
際まで来てもこんな調子とは。どうやら惚れ込みすぎたようだ。
少しでも、あなたの助けになれただろうか?
約束を守り、守護の意志に徹した少女の人生は、此にて。