10.結末 ※戦国パートのみ※※※
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冷えきった己の臓物の感覚と、鳴り止まない鼓動を感じながら、感情の熱がどんどん増して行く。
愛しい人に背を向け、迷わず走って行く。
約束を果たす為、戦場を蹂躙する存在へと目指す。
間に合え、間に合え…!
身体の機能が鈍らないよう意識しながら駆け抜けた先に、見つけた。
捉えた。
あれが、この戦場の仇だ。
速度を落とさぬまま日本刀を抜き放ち、強く踏み込んだ。
「朱音ッ!?」
名前が呼ばれた。呼んでもらえた。割り入った視界から二人の姿がはっきりと映った。
深手を負っているようだが、二人とも無事だ。ちゃんと生きている。
一瞬だけ安堵すると、持てる殺気の全てを対象に向けた。
制する。止める。殺してでも、護る。
喉元目掛けて日本刀を素早く振るうと、相手は回避すべく後退し、守護対象の二人と距離が出来た。
これで準備は整った。抑制は不要。
バチリ、と朱い雷が朱音の身体へ纏われる。その勢いは身体だけでは収まらず、戦場に幾つもの柱の様に絶え間なく降り落ちる。
「ほう、新たな宝の番人といった所か…。見飽きた気概だ」
稲光の柱は明らかに彼女の背後の二人を護る為に展開されている。
ひと目で介入者の目的を悟った仇は退屈そうに薄く笑ってみせた。
仇。徳川軍、石田軍と交戦する前に突如現れた乱入者。
独自の軍を率い、何よりその豪烈な火薬によって数え切れない味方が焼き払われた。
「ならぬ、朱音……ッ!」
この乱入者に幸村は覚えがあった。あの時も今と同じく宝を狙い、人質を取り策を弄した相手だ。
息も絶え絶えに呼ぶが、雷鳴に阻まれ彼女には届いていない。
「クソ、……生きてやがったとはな、松永久秀……ッ!」
かつて竜の六爪を狙い、部下を誘拐した悪辣の名を政宗は忌々しげに呟く。
二人の身体は幾度も焼かれ、装束も黒煤に塗れている。朱音が割り込んで来たことで、不本意ながらも片膝をついて戦況を見守る他ない。
雷の柱の先では、黒炎と朱雷が既に何度も衝突していた。
絢爛な装飾の施された宝剣を弾いた視界の先で松永の左手が動くのが見えた。
朱音が素早く横に大きく跳んだ一瞬後には、それまで立っていた場所一帯が豪炎に包まれた。
「……こちらの手札を知っているようだな」
回避は出来ても熱風まで避けるのは適わなかった。熱に焼けかけ痛む目元を押さえながら爆風から距離を取るとすぐに聴力に集中し、間髪入れずに突き出された敵の剣を防いだ。
追撃するより先に危険を察知した松永が後方へ下がった直後、両者の間に強烈な朱雷が落とされた。
(火薬と左手の鉤爪に注意、動きも速い……)
先に伝えられた情報を最大限に活かしながら朱音は相手を見据える。冷静さを保つよう努めている内に目の痛みも落ち着いてきた。
火薬と朱い雷が絶え間なく炸裂する戦場。
焦げ付いた熱気と冷えきった緊張感の中で刃が幾度も交わる。
ビリッ!と、鍔迫り合いした瞬間に朱が大きく弾けた。
「なるほど……これは例を見ない力の使い方だ」
燃え盛るような威力を伴う朱音の婆娑羅の力を松永は独自に分析していたらしい。
接近したままでは朱音の身体から直接放出される雷に灼かれるため、直ぐに距離を取った。
「君は、この私と刺し違える覚悟をしているようだ。迷いのない、ひと振りの太刀のような殺意だ…。凡庸ながらも少々興味が湧いたよ。何故そうまでして人に尽くす?」
挑発だろうが純粋な興味だろうが、勿論取り合うつもりはない。何一つ返事をせず、代わりに再度朱雷が松永目掛けて落とされた。
「朱音!朱音、ならぬ!そなた一人では!この雷の柱を解いてくれッ!斯様に際限なく力を使えば、そなたは…ッ!」
「……このenergyは……、」
守護の意思に依るものだとしても、隔てられた雷の柱に不用意に触れれば身体が灼けてしまう。深手を負った蒼紅の二人の現状では打ち破る事は敵わない。
同じ雷の婆娑羅の力を操る者として、政宗は朱音の雷の特性に勘づいた。必死に呼びかける幸村の取り乱し方からして、予測は確信に変わる。
「……こんなとこで、downしてる場合じゃねぇってのに…!」