9.着々と
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人選ミスだったかもしれない。
せめて正式な運営委員のメンバーに頼めば良かったのかもしれないが、話を受けた時に偶々側にいたのが慶次だったので、つい声を掛けてしまった。
朱音は預けられた夢吉を両手の上に乗せながら状況を見守っている。
ほうとう試食会。本日の放課後の主だった予定だ。
朱音は野菜コラボの一発案者にすぎないのだが、幸村はじめサッカー部の面々から是非来てくれ!と誘われ家庭科室にやって来ている。本日はサッカー部員による貸し切りだ。
野菜提供者として小十郎、そして当然のように着いてきた政宗もいる。
そして幸村、慶次、政宗。このクセの強い三者が集合してしまえば…。
「先程から何でござる前田殿ッ!調理中に邪魔を致さんでくだされ!」
「まぁまぁ!だって今の内に聞いておきたいんだもん〜!」
「ほうとうに関係ある話でござろうか?」
「ううん」
「ならばあちらで待っておられよ!」
「Hey、真田幸村。全体的に野菜が薄切りすぎねぇか?煮込み時間長ぇんだから南瓜なんてほぼ溶けちまってるぜ」
「な、政宗殿!貴殿は………ムム?確かに、一理ある助言……」
「お祭り男とこの俺を一緒にすんなよ」
小十郎から試食会の話を知り、はじめは冷やかしのつもりで来たが、実際の料理を目の前にした政宗は料理人スイッチが入ったようだ。
現状茶々しか入れてこない慶次とは対照的である。
「野菜は南瓜メインなんだろ。崩れやすいんなら最後の方に入れるんだ」
「しょ、承知致した……!」
「政宗様、流石でございますな」
「ったりめーだ。お前の野菜で作るんだ、妥協はnonsenseだろ」
「政宗様……っ!」
小十郎が涙ぐみ、しれっと二人の絆が展開されている傍らでは、今度はお腹が減ってきたらしい慶次が勝手に味見をしようとお玉に手を伸ばそうとしている。
「前田殿ッ!」
「へへ、美味しそうだからつい……」
幸村の腕によって阻止されたが反省の色が見えない慶次。いよいよ教室から叩き出されそうになった所で先に扉が空いた。
「励んでおるか皆の者!」
「お館様!!」
「ちょっと何このゲスト面子。絶対揉めるでしょ」
真っ赤なジャージを纏い真っ赤な兜飾りを被った筋骨隆々の男性が家庭科室にやってきた。サッカー部顧問の武田先生だ。佐助が呼びに行っていたようで、武田先生と一緒に教室へ入ってきた。
佐助の言葉通り、幸村周りの机ではごちゃごちゃしてしまっているが、それもまた青春!と武田先生は豪快に笑ってみせた。
それを見た慶次も一緒になってアッハッハ!と笑い出す。
「笑って有耶無耶にしようとしてますね、慶次」
見るに堪えず、遂に朱音も慶次の取り押さえに乗り出した。
夢吉を肩に連れて後ろからグイ、と慶次の腕を引いた。
「サッカー部の皆さんにご迷惑かけてはいけません!」
「ま、まつねぇちゃんみたいだな、朱音…」
「慶次がちゃらんぽらんしてるせいですッ大人しく待っててください!」
「はぁ〜い……」
冗談とはいえ、あまり絡みすぎると朱音が本気で怒り出す事は承知しているため、慶次は大人しく火元から離れた椅子に座った。
つまらなさそうにしている頭を夢吉が撫でて慰めている。
「また勝手にしゃしゃり出て来たの?風来坊」
「いえ、わたしが誘ったのですけど……」
「部員でもないのに、一人サッカー部に混ざって浮いちゃわないか心配だったんだって」
誘った責任を取るべく、慶次の隣に座り監視する朱音から佐助は経緯を聞いた。
「別に気にしなくて良かったのに。運営の手伝いしてる俺様もいるんだから」
「いえ、猿飛さんは…」
「そうだよな!そうだよな〜やっぱなぁ〜!ふふふ〜っ!」
佐助の言葉を聞くや否やにわかにテンションを上げた慶次。朱音がジロリと睨むが、構わず両手を合わせて興奮気味に身体を揺らしている。それでも立ち上がらないのは朱音の視線が一応効いているようだ。
ついこの間までは転校生の朱音に学園の案内や色々教えてあげてたはずだが、すっかり立場が逆転してしまった。