7.すれ違いと、想いと
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「おかえり、ちょっと遅かったね?何かトラブルあった?」
「いいえ!少し家庭科部に寄り道させていただいてました」
「家庭科部……?」
運営部の教室に戻ると、新聞部の面々が作業をしている中、戻ってきた朱音に声をかけてくれた。
佐助は普段通りだが、神妙な顔つきで呟いたかすがを見ると、先程の金髪の少年の既視感の正体に思い至った。じぃっとかすがを見つめる朱音の視線にも気づいたのだろう。
「お前の予想通りだ……楽しそうにしてただろう、あいつ」
「はい、このいただいたクッキーも金吾君と一緒に説明してくれました」
皆さんで食べましょうか、とクッキーの入った大量の小袋達を差し出すと、教室内の運営委員が皆進んで受け取りに来てくれた。どうやら家庭科部のお菓子は毎度頬が落ちるくらいの美味しさ、と評判が良いようだ。
笑顔で頬張る皆を見つめる朱音の肩が後ろからトントン、と叩かれた。振り返ると風魔が佇んでおり、その手にはクッキーの袋が1つ乗っている。それを指差す仕草をした後今度は教室の外を指差した。
「ああ、北条のおじいちゃんにお裾分けしたいんだね」
「もしかして図書館にいらっしゃる司書さんですか?勿論です。沢山いただいたので良ければもう一つお持ちになって、一緒に召しあがってください」
追加でもう一袋受け取った風魔の表情がほんのり和らいだのがわかった。ラッピングの練習ということで可愛らしいリボンが巻かれているのでプチギフトにもピッタリだ。風魔はコクリと頷くと早速教室を出ていった。
見送ってからクッキーを頬張った佐助が表情を綻ばせて感想を述べる。
「うんま〜っ!いつもほんとに美味しいわ」
「そうだな」
「家でも作ってくれるんだっけ?お姉ちゃんは料理苦手だもんね〜」
「うるさい!余計な事を言うなッ!」
かすがが咄嗟に叩こうと伸ばした腕を幼馴染は苦もなく避けた。思い切り睨まれているが、とても楽しそうにニヘニヘ笑っている。
「上杉先生に手作りお弁当の差し入れしようとして、ダークマター作り出したって聞いた事もあるけどな〜」
「よりにもよってその話を……!小助がしゃべったのか!?」
「さぁね〜?」
「待て!佐助ッ!!」
「きゃぁああ〜お助けぇ〜〜っ」
何発も繰り出す拳をヒラリヒラリと躱す佐助に埒が明かないと思ったのか、かすがは佐助を追いかけ始めた。
資料が立ち込める運営部の教室では大惨事になりかねないので、自ずと佐助は教室の外に飛び出して行った。
騒がしいのが廊下に移り、遠ざかっていく。
教室に残った朱音は自分の作業の準備をしつつ二人の関係を考察する。
(なるほど。幼馴染とも言ってましたし、あれは好きな子にちょっかいを掛けてしまう……慶次の言う甘酸っぱいやつですね)
色恋の予感を感じて ふふ、とひとり微笑むがその心に少しだけ寂しい思いが息吹く。
けれどそれはまだ朱音の自覚の外、ずっとずっと奥深くに眠っている。