7.すれ違いと、想いと
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石田方の勢力から攻め入られた報告を聞いた政宗は、まもなく本格的な戦に発展していくのではないかと予想を立てた。それには幸村も同意見だ。
『何にせよ、お前のとこが狙われたのはウチと手を組んだからだろうな。知らないでいるだけで徳川も攻撃を受けているかもしれねぇが』
政宗からの返答の文にはそのような内容が記されていた。
予測通り、現在日ノ本はおおよそ三つの勢力が台頭している。豊臣を離反した徳川派、豊臣の遺志を継ぐ石田派、そのどちらの大義にもつかず独自に旗を挙げた武田・伊達連合派。諸国の大名はそれぞれの志や立場などによって付き従い、勢力は殆ど拮抗している。
或いはそれでもどことも手を組まず独自の方針で構える軍もいる。
いよいよ大一番が迫る、そんな予感がする。この局面ともなれば、より正確な情報と慎重な判断が求められる。
「……すまぬな。毎度お前たちを頼りにする他ない」
「謝る事ぁないでしょ。それが俺様たちの正しい使い方なんだから」
「今となっては日ノ本全体が大戦の気配を感じておる。敵地への潜入は今までに増して危険を伴うものとなろう。だが必ず生きて戻れ。よいな、佐助!」
「合点承知。忍隊は各地に飛ばすけど、俺様は一番おっかないかもしれない石田の本拠地で情報を探ってみるよ。ってな訳で激励大感謝~、ついでに特別お手当も…」
「出発前に朱音に会うて行け」
遮ったタイミングは意図的なのかは不明だが、思いがけない一言に佐助は一瞬硬直した。まるで痛い所を突かれたかのようなぎこちなさだ。
珍しい反応を見せる佐助を幸村はじっと見つめてみせる。
「ええ~、あの子と顔合わせるといつも喧嘩になっちゃうし」
「嘘を申せ。今はそうではないのだろう」
幸村には似つかわしくない程の静かな声に佐助は押し黙らざるを得なかった。
『受け止めてやれ』。またあの助言が頭をよぎった。
この内側の葛藤はどんな形で決着がつくのか、佐助は全く予想できずにいる。やはり朱音と過去の記憶は極力重ねたくないと思ってはいるのだが、肝心の朱音本人が気にしないどころか、どうぞご自由にと言わんばかりに踏み込もうとしてくるため、戸惑いに近い感情が佐助の中に燻っている。
「ずっと気にかけておるのだ。出来る限り朱音に顔を見せてやれ。お前がいない時は大概お前の話をしておる」
兵法や戦略を本格的に学ぶにあたりニコイチのように寄り添っていたはずの二人だが、その会話の中には己がしっかり居座っていたとは。思わず幸村から目を逸らしながら頭を掻いた。
先日半分眠りながらあれこれ話そうとしていた彼女の様子を思い出す。結局何を言いたいのか8割方わからなかったが、そんな行動の理由もそういう事だったのだろう。
「あのお子様がいっちょまえに…」
「いいから必ず行ってやれ……お前でなくてはならないのだ、きっと」
複雑な思いを滲ませた声色が佐助の背中を押した。