6.成長するために
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演劇部から運営部の教室に戻ると朱音はポスターの件についてかすがに確認する。
「印刷物の最終チェックは新聞部が担当してもらえるということでしたよね?」
「ん?ああ、正確には……」
かすがの視線の先には学帽を目元より深く被り、顎と頬の赤いフェイスペイントが特徴的な男子生徒がいた。
「あいつ、風魔がやるんだ」
かすがに呼ばれた風魔は音も立てずにこちらへ来てくれたが、相変わらず一言も言葉を発しない。
「演劇部の方が公演ポスターを印刷して欲しいそうです。デザインの提出は後日との事ですが…」
朱音の説明に風魔は静かに頷いた。
やはり言葉を発さない彼を朱音は不思議に思う。運営の仕事も黙々とこなす彼だが、極度の人見知りなのだろうか。もしかしたら知らない内に仕事を引き受けすぎたりしてはいないだろうかと、心配になってきてしまい、せめて感情を読み取れないかと前髪に阻まれる目元を凝視する。
そんな朱音の行動に気づいたのか、風魔はグッと親指を立てた。所謂グッジョブのポーズだ。
「任せろ、と言っているんだろう。コイツはいつもこんな調子だ」
「そうなのですか。でも猿飛さんはよく風魔さんとおしゃべりしてる様子で……」
「それはほぼ佐助が一方的に喋って、風魔が相槌だけ打ってるんだ」
流石元新聞部員。かすがは風魔や佐助の関係性も承知しているようだ。不意に視線を感じると風魔も朱音を見つめている事に気づいた。少し首を傾げ様子を伺っているようだ。
「慣れてくると何を考えてるか分かるようになってくるぞ。今は風魔は逆にお前を心配しているんじゃないか?」
「え?」
「多分、転校生な上に毎日放課後は学内を走り回ってるからだろう」
かすがの言葉に風魔が頷いた。
確かに学年の違う風魔と顔を合わせるのは基本的に放課後であり、書類のやりとりや現場の確認などあちこちに赴いている朱音は確かに忙しそうに見えていたのかもしれない。
「わたしは全くもって元気です。お気遣いありがとうございます」
朱音の言葉を聞くと風魔も表情を和らげた気がした。かすがの言うところの『慣れてくると何を考えてるかわかるようになる』とはもしやこういう事だろうか、と少し嬉しくなった。
「新参者のわたしに教えてくださったり、案内してくださったり……皆さんから助けていただいているお陰ですね。かすがさんも、先程はありがとうございました」
「……まったく、素直な奴だな」
だからあいつも気に入るわけか、と納得した様子でかすがは小さく頷いた。
そのあいつなる人物は、学内菜園にて寒くもない気候にも関わらず派手なくしゃみをしたという。