6.成長するために
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「片倉殿の菜園が最たる要と特筆される企画店……しかしそれではならぬのだ!」
立ち上がるなりそう言い出した幸村に佐助はじめサッカー部員が視線を向けると、幸村は教卓の前に立った。
定例であるサッカー部の昼休みミーティング。本日は練習の他に、学園祭に向けての話し合いも行われている。
「野球部にあやかっていてばかりでは、我らの名が霞みかねない!合同開催であろうとも対等以上であらねばならぬ!」
「なるほど?それで何か策はあるの?」
「うむ!」
自信満々に頷くと幸村は一冊のファイルをばぁん!と教卓上に置いた。現キャプテンがミーティングに文房具類を持ち込む事は稀であるため部員の注目が一斉に集まる。
「これはお館様にお伺いし纏めた、歴代の学祭で出したほうとうのレシピファイルだ!これらを用いつつ、今年度は過去最高のほうとうを作る!」
つまり味、品質でのアプローチに舵を切るようだ。過去データの収集、比較。アンケートなど売れ行きのデータが残っている年もあるようで、真剣に考察すれば至高のレシピに辿り着けるかもしれない。
「従って準備期間に入る頃には候補を絞り、試食会を行う事を考えている!どうだろうか!」
まるで冬季の合宿中に皆で鍋をつつく様子を思い出したのだろう。話を聞いている部員からは歓声が上がる。
大いに賛成の声を聞き、方針が決定した所で佐助も提案した。
「こだわりの一杯ね。いいと思うけど、客からしたら実際食べないとわからないから、宣伝文句もちゃんと考えた方がいいね」
「宣伝文句?呼び込みとは違うのか?」
「所謂食べてみたくなるような強烈なキャッチフレーズを作るってこと。一発で興味を持って味の想像も捗っちゃうような一言!記事で言う見出し、煽り文句ってとこかな」
「成程!それならば新聞部であるお前の力を借りたい!」
「勿論そのつもりですよっと」
*
「と、そんな感じでサッカー部も気合い十分よ」
「なるほどな。あれこれ手を出さずに至極の一品にて勝負か……潔くていいじゃねぇか」
畑の菜っ葉を撫でながら小十郎が佐助の話を頷きながら聞いている。漸く残暑も落ち着きつつあり、夕方には時折心地の良い風が吹き込んで来るようになった。
「丁度ウチとは逆だな。俺らは複数のメニューで展開しようと思ってな」
「へぇ、目玉商品は?」
「勿論野菜たっぷりの九龍カレーだ。」
「う、強い。てか何くーろんって」
「九龍球ってゼリーにあやかってんだよ。要はゴロゴロ野菜が入ってるカレーって事だ」
料理名にも龍の字が入っているので、政宗も即頷いたネーミングだ。誇らしげに説明する小十郎も楽しんでいるのがわかる。
たかがネーミングだが、実はそういう遊び心こそ客の興味を引くことも有り得るので、こちらも油断は出来ないと佐助は気を引き締める。
「ともあれ、必要分の野菜の量が決まったら教えろよ。よっぽど足りねえって事はないだろうが、念の為な」
「勝手に始めた菜園なのに何で十分提供できるだけの規模になってんのよ……」
普段は政宗を諫める事も多く、パッと見生真面目そうな強面の意外な一面ともいうべきか。ここに来て存分に発揮されようとしている。
いたずらを仕掛けた子どものように小十郎はニヤリと笑ってみせた。