6.成長するために
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「あとねあとね!この間も嬉しいことがあって…!」
「やかましい、もう寝ろ」
興奮気味に身を乗り出していると、後ろから頭を叩かれた。むくれて叩いた人物を睨むが直ぐに向き直った。
「もう、兄上ったら!まだそんな時間じゃありません………そうだ!とっても意外だったんですけど、実は兄上ね、学園ではとっても……」
「余計な事を言うなッ!」
叩いた時とは比べ物にならない程素早い動きでミュートボタンを押されてしまった。
「あぁーっ!何するんですか!何で言っちゃダメなんですか!」
「……、」
兄にスマホごと取り上げられ通話の邪魔をされてしまい、朱音は取り返すべく立ち上がる。だがただでさえ長身の兄が背伸びまでしてしまえば伸ばした腕の先のスマホにはジャンプしても届かない。
『わわ、ははは揺れる揺れる、お父さん画面酔いしちゃうよ〜〜〜』
こちらの会話はミュートされてしまっているが、通話先から楽しそうな声が聞こえてきた。
ビデオ通話を続けたい朱音は尚も取り返そうとしているが中々叶わずにいる。
「ファザコン」
「いいんです!父上、まだ父上とお話するんです〜〜っ!!」
『でも兄妹でも、学校でも仲良く元気に過ごせてるようで安心したよ』
兄妹喧嘩のやり取りは聞こえていないだろうが、状況の察しはついている2人の父が穏やかに笑った。
妥協案として、ミュートを外し兄の手の中のままで会話が再開できた。
「はい、今は学園祭の準備が始まってて、すごく楽しいイベントになりそうなんです!」
『なんだか懐かしいなぁ。そんなに楽しそうなら、お父さんも見に行けたらいいのになぁ』
「ぜひ来てください父上!母上も一緒に!」
『そうだね。お母さんに相談して、本当に一瞬だけ帰国しちゃおっかな〜』
「……馬鹿共が、」
付き合ってられるか、と忠朝はため息をつく。朱音はどこまで本気なのか、目を輝かせて父への説得を続けている。
「本当に良い学園なんです。素敵な人ばかりで……ぜひ、父上と母上にも婆娑羅学園を見に来て欲しいです」
『それは良かった。私達の都合で朱音には転校を強いてしまったから……楽しく過ごしてくれてるのなら何よりだ』
「それにいい時代になりました。父上と離れててもこうしてお顔を見てお話できますし。だからさみしくないです」
模範的な家族愛に画面の向こうの父の顔がじぃぃん…と涙ぐんでいる。
ファザコンあらば親ばか然り。間近で仲良し親子のやり取りを見守る羽目になった忠朝は居心地悪い。
それから暫く気の済むまで父と話して、今日は都合が合わなかった母にもよろしく伝えるよう頼むと通話を終えた。
時間を確認すると日付が変わる直前だった。結局最後まで通話に付き合ってくれた(?)兄は眠そうに欠伸を連発している。
「兄上、寝るならお布団いかなきゃですよ」
「だれのせいだ、ばかが…」
わしっと力の入り切らない手で朱音の頭が掴まれた。
それからおやすみの挨拶代わりにポンポンと叩くと忠朝は自室へ戻っていった。