4.起点
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「学園祭……!」
「然様。この学園は二学期末、師走に行うのでござる」
「初めての、学内イベントです…!」
学園内各所に一斉に貼り出された、学園祭告知ポスターに目を輝かせる朱音を幸村は微笑みながら見守っている。午前の授業の間に興味津々で駆け出した転校生について行き、説明してくれている。
「クラス毎で出し物をするのですか?」
「然様でござるが、どちらかと言えばこの学園は部活動単位の出店に力が入っておる。部費の調達も兼ねているためでござろうな」
「なるほどでござる」
「むむ?」
「い、いえ!何だかつい……」
「……う、うむ。して、朱音殿はまだ入部する部活は決めておられぬと、」
「沢山あるので迷っておりまして……」
顎元に手を当てて唸る朱音は本気で悩んでいるようだ。室内室外大小様々、おそらく総勢100を超える部活動や同好会があるのだから仕方ないのかもしれない。
「Hey!真田幸村!!今日もグラウンドは俺ら野球部がいただくぜ!……ってアンタ、」
踊り場に貼られたポスターを見詰めていると、聞き覚えのある声がした。
やはり先日グラウンドを見に行った時に出会った男子生徒だった。彼は片目に眼帯をしているので間違えようがない。
「Good morning、転校生。朱音だったな」
「おはようございます。伊達君」
「で、朝から女子と一緒にいるなんざ珍しいなァ?真田幸村」
ニヤリ、と幸村を見遣る政宗。
やはりこういう年頃の人達はすぐそういう事言うんですよね…、と朱音は聞き流す姿勢だが幸村は案の定慌てふためいた。
「い、いや、その!」
「慶次も似たような事言ってましたね……、これはまずいかも、」
もしや度々話しかけてくれるのは転校生だからと気を遣わせてしまったのかもしれない。複数の人間に誤解されてしまっては学園内にも広がりかねないし、善意で助けてくれている幸村に迷惑は掛けたくない。
「わたしはもう大丈夫ですので、ありがとうございました、真田君」
ガーン!!と。
サッと会釈をして教室に戻ろうとすると、幸村は心底ショックを受けた表情をしていた。
「と、……ともに!」
進路を塞ぐように一歩前に踏み出してきた幸村と目が合った。唐突な大声も相成って朱音は足を止めた。
慌てすぎて顔を赤らめた幸村は、それでもとまっすぐに伝えてきてくれた。
「某はそなたと、友………友人に、なりとうござる…!」
「はい、もちろんです」
「温度差がひでぇな」
おもしれぇやりとりだな、と政宗も呆れて失笑している。
決死の思いのように話す幸村に、サッパリと応える朱音。だが朱音は嬉しそうにニコニコ笑っており、それを見た幸村は不思議と安心した。
「改めまして、どうぞよろしくお願いしますね、真田君」
「う、うむ!また困り事などあれば遠慮なく某に!」
「ありがとうございます」
ではお先にと。政宗が幸村に用事があると思ったようで、手を振りながら朱音は教室の方へ戻って行った。
踊り場には男子二名が残され、途端に政宗はガシッと幸村の肩に腕を回し、ワクワクしながら事情を聞きだそうとする。
「で、実際どうなんだよ真田。親切心にしてもわざわざ女子に近づくアンタを見たのは初めてなんだが?」
「……それは、わかり申さぬ……。ただ、朱音殿はひとりにさせたくないと、」
「あいつ、クラスに馴染めてねぇのか?」
「いえ、そういった訳ではないのだが。何となく……」
「Love?」
「ぐぬ…ッ 慶次殿といい、貴殿といい……!」
政宗に言い返しながらも確かに、と幸村自身も不思議に思う。
中学時代に一度、ほんの少しだけ話した間柄だというのに、何故彼女の事が気にかかるのだろう。特に何かあったわけではないと思うが……などなど。照れ隠しの様子はなく、真剣な顔で考え込む幸村を見て何となく政宗も無闇に言いふらすのは止めておいてやろう、と思ったようだ。
「まぁグラウンドは使わせてもらうがな」
「な!貴殿はまたもや勝手に!今日も譲りませぬぞ!」