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情勢は移りゆく。
乱世を終わらせる為にどう動くか、忍隊が持ち帰った情報を元に武田軍総大将たる幸村は状況を整理する。
まず書状を寄越してきた徳川軍。
結託の呼びかけに各地の大名の反応は半々といった所。分け隔てなく各地へ書状を送る姿勢はそれだけ本気と捉える事もできるが、報告によると各地の村で徳川軍の兵が暴れて民を虐げているという情報もあり、真意が掴めない。
対して徳川へ敵意を燃え上がらせる石田軍にも同様の噂が立っている。何より勢力を取り戻す為に、かつて豊臣に従っていた大名達に半ば強引に迫り、本格的に挙兵に向けて動いているようだ。
少し前には小田原にて豊臣秀吉を葬った政宗を討つべく、石田三成は単身奥州へ攻め入り政宗に手傷を負わせた。しかし政宗は存外早く回復し伊達軍は南方へ進軍しており、どうやらそれは各地を襲う石田軍の真意を確かめる為のようだ。
旗を挙げる目的は何だ。平定した先に望むものは何だ。何のために戦うのか。
それにしても何故敵対勢力ではなく、無関係の民を襲うのだろうか。
民草を戦に巻き込むことは決してあってはならない事だ。お館様も常々言っていた事であり、幸村自身もその考えに大いに賛同する。
他国に信頼を置けないのであれば、やはり中立だろうか。しかしそうした先、家康あるいは三成の軍勢に侵攻されたとなれば、武田軍単体で渡り合うには厳しい戦いとなる。
「何よりお館様より託されし武田の兵、その命運……無謀な使い方をしてはならぬ、」
一つの選択が千の命運を左右する。その責任は何よりも重かれど、足踏みして手遅れになることは避けねばならない。
ならばどうする。何を選ぶ。どうすれば、誰ならば信頼が置ける?それは、その人物は……。
「………政宗、殿…」
初めは敵対し、時には隣に立ち、幾度となく刃を交えて来たからこそ、かの人物の為人(ひととなり)は承知している。混迷極める乱世で己と同じように民を想い、太平への志を確実に抱いているであろう人物は、伊達政宗だと。
だがこの提案を伊達軍は受け入れてくれるだろうか。先日易々と城を奪われた国主代行が、奪った張本人に同盟の提案するなど。さぞや愚かに映るに違いない。
「だが、この思いは紛れもなく真…。迷いのない意思ならばきっと政宗殿にも届くはず!」
未熟な身なれど、これまで見聞きした事を踏まえそう結論に至った。
また叱られるかもしれないが佐助にも相談してみよう、と幸村は早速自室を飛び出した。