3.猿と
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(ようやく現代)
「むむむ!これは本格的に視なくては!」
言うがはやく、その女生徒は本格的な弓を取り出し素早く構えた。弓道場でもない一教室でお目にかかるにはひどく不似合いな長弓に朱音は驚きの表情を浮かべた。
「的も!もっと細やかな物に変えて占いますね!」
「あの、一体何が…?」
「先の結果から特に注視するのは…『過去』と『恋愛』です!注目の転校生ちゃんの恋…これはきっと、逃せない一大事です!」
状況についていけない朱音を他所にこの占い同好会に所属する鶴姫は期待に目を輝かせながら弦を引いている。
「まぁまぁ、いいじゃねぇか!俺も朱音の恋路、ちょ〜気になる〜!」
朱音の隣で声を弾ませているのは、例の如く学園内と部活動の案内役を買って出てくれている慶次だ。恋、という単語に相変わらず食いつきのいい様子に朱音は困り顔で見守る。
「当たるって評判なんだぜ〜!鶴姫ちゃんの占い!特に恋占いはってね!」
「は、はぁ……」
他人事だというのに妙に高揚した慶次に高速で背中を撫でられる。先日再会した秀吉もおねねの事について己に詰め寄られた時はこんな気持ちだったのかもしれないと、ちょっと朱音は己を省みる事になった。
「千歳の先まで見通しますよ〜………って、きゃあ!?」
部員たちの期待のこもる視線を集めながら、きりきりと弦を引いた鶴姫が離す直前、占い同好会の教室の扉が開けられた。集中していた鶴姫は驚いて、不意に弦から手を離してしまった。
ぴゅーん、とあらぬ方向へ飛び出した矢は壁面に一度ぶつかると今教室にやってきたばかりの人物の方へ。
よろよろ落ちてきた矢は、彼の手で受け止められて動きを止めた。
「あれ、お邪魔しちゃったかな?」
「なんだいお忍びくん〜!!今良いところだったのに!」
「え、何で前田の風来坊がここに……って、」
ギャアー!と慶次に雄叫びを上げられてうるさそうに首を振る来訪者、佐助は占い同好会の部室に朱音もいる事に気づいた。
朱音も佐助が幸村とよく一緒にいる1個上の先輩と気づいたようだ。
「そうでした!今日は私達への取材の日でしたね!」
顔が広いようで鶴姫も合点が行った様子で佐助へ近づいた。
取材?と首を傾げる朱音に気づいた慶次が説明してくれた。
「学内新聞だよ。お忍びくんは新聞部も兼任してるから、記者として来たんだろうねぇ」
「運動部と兼任……3年生なのに?」
「後続に困っててねぇ。ま、ほどほどの息抜きでやってるって感じだね」
相変わらず緩い雰囲気で返す佐助は早速特ダネを掴むべく鶴姫に向き直る。
「さて、占い同好会のエースさん。普段はダーツメインで占ってたと思うんだけど、今日は立派な弓を構えてるね!何してたのか聞いてい〜い?」
「もちろんです!今こちらの転入生ちゃんの運勢を占っていたんです。初めはいつものダーツだったんですけど、興味深い相が出まして!本腰を入れるべく神弓を取ったところだったんですっ」
ほぉ〜、と表情筋を滑らかに動かす佐助は朱音を見遣る。学園の新入りは連日こうしてあちこち見学してれば注目を集めてしまう事もあるのだが、どうにも慣れるのは難しい。
ここで佐助は部室に入ってきた時に掴んだ長尺の矢の意味に気づいたらしい。慌てた様子で朱音に差し出した。
「あちゃ〜、もしかして俺様、台無しにしちゃった…?ごめんね、」
「い、いいえ」
「残念ですが……こういう事もありますね…」
鶴姫が明らかに落胆している。ただのアクシデントによる失敗にしてはひどく肩を落としている。
「神弓を使う占いは特別なものでして……結果に関わらず半期に1回しか行えないものだったんです………あら?」
事情を聞きながら佐助から矢を受けとる朱音。その二人の様子、特に手元を見ながら鶴姫がハッと驚いた表情を浮かべた。
驚きすぎて声すら上げられなかったようで、鶴姫の様子に気づいたのは慶次だけだった。
「これは………そう、そうかも!きっとそうですっ!」
「どうされました?」
矢を受け取った朱音が尋ねるが、鶴姫は何度も噛み締めるように頷いている。何か考えているようだが、ついにはその場で弓を抱えてぴょん!と高く跳ねた。
「なるほどそういう事なら!なんてロマンチック!間違いありません!やっぱりやっぱり、とっても素敵です〜!」
「あ、あの…?」
「えとえと、ごめんなさい!占いは失敗しちゃいましたが……でもきっと、あなたはきっと巡り会えます!」
「………なぁお忍び君、今もしかして後期の部活インタビュー中?」
「え、ああうん、そうだけど」
「じゃあまだまだ色んな部活回るんだろ!取材がてらこの子、朱音の学内案内してあげてよ!」
「はぁ?」
突然の慶次の提案に佐助も朱音も不意打たれた。二人の反応をよそに慶次はわざとらしく腕を組んで悩む仕草を見せた。
「実は俺……今日 孫市先生と面談があるんだよ。そろそろ時間でさ…今日は朱音の案内を切り上げようと思ってた所なんだけども…」
「面談?この時期に?担任でもない先生と?」
「そう、俺は年中いつでも孫市先生と面談できるのさ…」
嘘だな。この場にいる全員がそう思いつつも、慶次は構わず話を進めていく。一瞬だけ鶴姫に素早くウインクを送ると鶴姫は意図を察したのか笑顔で頷いた。
「というわけだから!孫市先生帰っちゃう前に行かなきゃいけないから!この子よろしくね!」
「け、慶次!?」
言い逃げするようにスッタカター!と部室を飛び出して行ってしまった。
「むむむ!これは本格的に視なくては!」
言うがはやく、その女生徒は本格的な弓を取り出し素早く構えた。弓道場でもない一教室でお目にかかるにはひどく不似合いな長弓に朱音は驚きの表情を浮かべた。
「的も!もっと細やかな物に変えて占いますね!」
「あの、一体何が…?」
「先の結果から特に注視するのは…『過去』と『恋愛』です!注目の転校生ちゃんの恋…これはきっと、逃せない一大事です!」
状況についていけない朱音を他所にこの占い同好会に所属する鶴姫は期待に目を輝かせながら弦を引いている。
「まぁまぁ、いいじゃねぇか!俺も朱音の恋路、ちょ〜気になる〜!」
朱音の隣で声を弾ませているのは、例の如く学園内と部活動の案内役を買って出てくれている慶次だ。恋、という単語に相変わらず食いつきのいい様子に朱音は困り顔で見守る。
「当たるって評判なんだぜ〜!鶴姫ちゃんの占い!特に恋占いはってね!」
「は、はぁ……」
他人事だというのに妙に高揚した慶次に高速で背中を撫でられる。先日再会した秀吉もおねねの事について己に詰め寄られた時はこんな気持ちだったのかもしれないと、ちょっと朱音は己を省みる事になった。
「千歳の先まで見通しますよ〜………って、きゃあ!?」
部員たちの期待のこもる視線を集めながら、きりきりと弦を引いた鶴姫が離す直前、占い同好会の教室の扉が開けられた。集中していた鶴姫は驚いて、不意に弦から手を離してしまった。
ぴゅーん、とあらぬ方向へ飛び出した矢は壁面に一度ぶつかると今教室にやってきたばかりの人物の方へ。
よろよろ落ちてきた矢は、彼の手で受け止められて動きを止めた。
「あれ、お邪魔しちゃったかな?」
「なんだいお忍びくん〜!!今良いところだったのに!」
「え、何で前田の風来坊がここに……って、」
ギャアー!と慶次に雄叫びを上げられてうるさそうに首を振る来訪者、佐助は占い同好会の部室に朱音もいる事に気づいた。
朱音も佐助が幸村とよく一緒にいる1個上の先輩と気づいたようだ。
「そうでした!今日は私達への取材の日でしたね!」
顔が広いようで鶴姫も合点が行った様子で佐助へ近づいた。
取材?と首を傾げる朱音に気づいた慶次が説明してくれた。
「学内新聞だよ。お忍びくんは新聞部も兼任してるから、記者として来たんだろうねぇ」
「運動部と兼任……3年生なのに?」
「後続に困っててねぇ。ま、ほどほどの息抜きでやってるって感じだね」
相変わらず緩い雰囲気で返す佐助は早速特ダネを掴むべく鶴姫に向き直る。
「さて、占い同好会のエースさん。普段はダーツメインで占ってたと思うんだけど、今日は立派な弓を構えてるね!何してたのか聞いてい〜い?」
「もちろんです!今こちらの転入生ちゃんの運勢を占っていたんです。初めはいつものダーツだったんですけど、興味深い相が出まして!本腰を入れるべく神弓を取ったところだったんですっ」
ほぉ〜、と表情筋を滑らかに動かす佐助は朱音を見遣る。学園の新入りは連日こうしてあちこち見学してれば注目を集めてしまう事もあるのだが、どうにも慣れるのは難しい。
ここで佐助は部室に入ってきた時に掴んだ長尺の矢の意味に気づいたらしい。慌てた様子で朱音に差し出した。
「あちゃ〜、もしかして俺様、台無しにしちゃった…?ごめんね、」
「い、いいえ」
「残念ですが……こういう事もありますね…」
鶴姫が明らかに落胆している。ただのアクシデントによる失敗にしてはひどく肩を落としている。
「神弓を使う占いは特別なものでして……結果に関わらず半期に1回しか行えないものだったんです………あら?」
事情を聞きながら佐助から矢を受けとる朱音。その二人の様子、特に手元を見ながら鶴姫がハッと驚いた表情を浮かべた。
驚きすぎて声すら上げられなかったようで、鶴姫の様子に気づいたのは慶次だけだった。
「これは………そう、そうかも!きっとそうですっ!」
「どうされました?」
矢を受け取った朱音が尋ねるが、鶴姫は何度も噛み締めるように頷いている。何か考えているようだが、ついにはその場で弓を抱えてぴょん!と高く跳ねた。
「なるほどそういう事なら!なんてロマンチック!間違いありません!やっぱりやっぱり、とっても素敵です〜!」
「あ、あの…?」
「えとえと、ごめんなさい!占いは失敗しちゃいましたが……でもきっと、あなたはきっと巡り会えます!」
「………なぁお忍び君、今もしかして後期の部活インタビュー中?」
「え、ああうん、そうだけど」
「じゃあまだまだ色んな部活回るんだろ!取材がてらこの子、朱音の学内案内してあげてよ!」
「はぁ?」
突然の慶次の提案に佐助も朱音も不意打たれた。二人の反応をよそに慶次はわざとらしく腕を組んで悩む仕草を見せた。
「実は俺……今日 孫市先生と面談があるんだよ。そろそろ時間でさ…今日は朱音の案内を切り上げようと思ってた所なんだけども…」
「面談?この時期に?担任でもない先生と?」
「そう、俺は年中いつでも孫市先生と面談できるのさ…」
嘘だな。この場にいる全員がそう思いつつも、慶次は構わず話を進めていく。一瞬だけ鶴姫に素早くウインクを送ると鶴姫は意図を察したのか笑顔で頷いた。
「というわけだから!孫市先生帰っちゃう前に行かなきゃいけないから!この子よろしくね!」
「け、慶次!?」
言い逃げするようにスッタカター!と部室を飛び出して行ってしまった。