こがらしの記憶
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「いいのですか?」
「いいよ、別に。一人くらい増えたって一緒」
「ありがとう!」
返ってきたのは警戒心のない純粋な笑顔。いや、状況を正しく理解していないだけかもしれない。
真っ直ぐ見詰められるのが急に居心地が悪くなってそっぽを向くと、彼女はくすくすと笑い出した。なんかムッとした。
「なに笑ってるの」
「いいえ、小さいのに頼もしいなぁって」
「あんたが頼りないだけでしょ」
「えー、そうですか。わたし、これでも……誰かの、お世話を……今日だって……していたような、」
「言い切れてないじゃん」
「だ、だって…!」
「ガキ相手に口喧嘩もできないようじゃ、だめだめじゃん」
むーっと子ども顔負けに頬を膨らませた彼女は意外と面白い人なのかもしれない。
「いいよ。だめだめなあんたの面倒、おれがみてあげる」
「だめだめじゃないですけど、よろしくお願いします」
唇を尖らせながら頼んできた彼女がハッとしたような仕草をすると、再びおれの顔を覗き込んできた。
「あなたのお名前は?」
「ないよ。忘れたもん。あんたは?」
「……えと、…思い出せなくて…」
「名前も?」
「………」
聞き返した途端、初めて深刻そうに…不安そうに眉を顰めた彼女にこれ以上追及するのは止める事にした。
「じゃあおれは今から、おねーさんって呼ぶから」
「じゃ、じゃあわたしは……あなたのこと、ちびちゃんって呼びます!」
「……好きにすれば」
敬語で喋る癖に呼び名にはちっとも敬意が払われてなくて。なんていうかこの人と話してると力が抜ける。それでもって疲れた。
誰かと話したのが、随分と久しぶりだったせいだろうか。
疲れたはずだけど、不思議と嫌だとは思わなかった。
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