1.時期外れのはじまり
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小田原城にて、覇道の道を唱え天下統一を目指した豊臣軍大将・豊臣秀吉は伊達政宗によって討ち取られた。
同時に別地にて豊臣軍師・竹中半兵衛も片倉小十郎と交戦の末に敗北、その場で命を落とした。
要たる両名が共に戦死したことで豊臣軍は崩壊していくと思われたが、ここで旗を挙げた物がいた。
其は豊臣の配下であった三河の将・徳川家康。
残党となった豊臣一派からは不忠義である、裏切り者と批判の矛が向けられたがそれでも家康は我こそが天下統一を成し遂げると高らかに宣言した。
曰く、誰もが笑顔で手を取り合える日ノ本へ。揺るがぬ絆で築くためと。
徳川軍と豊臣残党との対立に始まり、武力衝突の加速の予感。また乱世は混迷を極めていくのだろう。
『乱世の産物』たる少女は薩摩の地よりお市、小助と共に甲斐まで戻ってきていた。
自身に宛てがわれた部屋の中で灯りもつけず畳に寝そべるように身体を折りたたみ、ただ呆然としている。
『お前で最後だ。弱き己は……弱きは、これで』
彼…秀吉と話した時の言葉を思い返していた。
大阪城に囚われていた己をきっと私情で逃がしてくれた。だからこそ、なにか、もっと。彼に働きかける事もできたのではないか。そんな後悔に似た感情が何日にも渡って身体を巡り続け未だ鎮まる気配がない。
後悔しても、どれだれ求めても時は戻らない。そんな事はずっと昔から知っていたはずなのに、また同じ思いに苛まれている。
「ほんとに部屋の苔になってるとはね」
声の主がこの部屋に近づいて来てる事は気配でわかっていた。けれど出迎える元気もなければ誰とも話す気すら起きず、無様に寝転がったのまま会する事になった。
背中越しに声を掛けられたものの返事もできなかった。
「……調子狂うのよ、そういうの。おーい」
無視されたにも関わらず遠慮なく部屋に入り少女・朱音の後頭部をツンツンとつついてくる、とある忍。
鬱陶しそうに頭を振ってみたが彼は止める気はないようでぷすぷすと指を柔く刺し続けてくる。
「土台無理な話よ。日ノ本を掌握しかけてた武将相手に、昔馴染みだからってだけで留めるなんてさ。仮にあんたがそっちに行ってても結果は……」
「……断言なんて、出来るはずがないです。誰にも、過ぎた事の、もしもなんて」
秀吉が逃がしてくれた事実は誰にも打ち明けていない。全てが終わった今話した所で、それこそ後悔が大きくなってしまいそうな気がして。漸く口を開いた朱音の声色は低く沈んだものだった。
己が世話を焼くのはつくづく乱世を図太く生きるには向いてない性格の者ばかりだ。
ふぅ、と息を吐いて佐助は朱音の頭を黙って撫でた。