16.祭りの後に※
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数百ものキャンドルの設置を終える頃には、辺りは殆ど暗くなっていた。
生徒たちの協力の元、真っ暗闇になる前に全ての企画店の片付けと準備が整った。
自然と暁丸を中心に広がるように配置され、いよいよ点火するのみとなった。
「秀吉様からの言伝てだ。集計にまだ時間がかかる。時間になったら点火も運営部で取り仕切れ、との事だ」
生徒会役員の中でも一番足が速いという三成がグラウンドまで知らせに来てくれた。
たまたま校舎から近い場所にいた朱音に全体への周知を頼むと、夕方の出来事については言及しないまま三成は足早に去っていった。それだけ集計で忙しいと見える。
朱音は直ぐに他の運営委員に伝言を伝えると、着火ライターが用意された。
点火の予定時刻は18時30分。もう間もなくだ。
「Hey!そろそろLight upか朱音?」
「朱音殿!某らも手伝える事があれば…、?」
運営委員の輪の中に駆け寄ってきた2人だが、不意に幸村が朱音の顔を覗き込んだ。
「……具合が悪うござるか?」
「え?確かに夕方ちょっと大変な時はありましたが…」
ほぼ暗がりの中でもわかってしまう程、疲れた顔をしているのだろうかと朱音は己の頬を押さえた。
真剣な表情の幸村を政宗はじーっと見詰めてから切り出した。
「だったら俺が代わってやるよ。ライター貸しな」
「な、ならば某も!」
最終的には片付けまである事も考えれば、確かに一時でも休んだ方がいいかもしれない。
申し訳ないが点火は2人に任せ、朱音は少し離れた場所のベンチにでも座って待機することにした。
ところが運営委員の面子から着火ライターを受け取った途端、二人は駆け出した。
「Ha!アンタより俺が多く点けてやるぜッ!GO!」
「何を!某とて負けもうさぬ!ぬぉおおおお!」
「は、走っちゃだめです!」
下がろうとした朱音が慌ててあげた声は無事聞こえたようで、二人はピタッと動きを止めた。だが朱音含め、周囲の面々から呆れた視線が両名に寄越されている。
「……大小様々なキャンドルが点在してるので、どうか慌てずに。安全最優先でなにとぞ…」
「むむ、つい…!面目次第もござらん…、」
「……Sorry.」
キャンドルが倒れでもして火事になっては、来年以降確実に後夜祭が中止なってしまう。直ぐに承知した二人は、他の運営委員と同じく1つずつ慌てず点け始めた。
「……そうでした。真田君、」
「如何された?」
「これ、結局ずっと持ったままでした。一緒に点けていただいてもよろしいですか?」
制服のポケットにギリギリ入る、今回最小サイズのキャンドル。
以前熱を出して欠席した日の夜、秀吉が朱音への差し入れとして、幸村と佐助に持たせたサンプルだ。
そのキャンドルを見て直ぐに思い出したようで、幸村は快く受け取ってくれた。
「承知致した!では何処に置くべきか…!むむ、こちらの特に賑やかな辺りはどうでごさろう!」
「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
「任され申した!」
サンプルと同じくらいのサイズが集まっている所に朱音が持っていたキャンドルも置かれ、幸村のライターによって火が灯された。
小さくも優しい光を放つキャンドル達を見守りながら、朱音は今度こそベンチの方へ歩き出した。