15.当日、夕暮れ時
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「………わざわざ僕等に説明させるつもりかい?一回目の公演の報告はしっかり届いているよ。事前に提出した内容を大きく逸脱し、特定の思想を強いるものであった、と」
話してる内容がハッキリ聞こえる距離まで来ると、面倒そうに額に手を当てて詰問する半兵衛の姿があった。演劇部の先頭には件の大友宗麟が不満に満ちた表情で半兵衛達と対峙している。
半兵衛傍らには三成と……何故か午前会った例の中学生、左近の姿もあるが、中枢を担う二人が居るという事はそれなりに重い事態のようだ。
「午前は無許可で放送室に入って宣伝しているし……在校生のみならず、学外の来訪者に与える悪印象も看過出来ないね」
「そもそも!お前達が僕らの活動を頭ごなしに否定するのがいけないのです!事ある度に制限をされては布きょ…表現がままならないのです!そう、これは弾圧!お前たちのしている事は弾圧です!」
「貴様ァ……ッ!半兵衛様に向かって…!」
「う〜わぁ〜、こんなおっかない三成様に盾突く人達もいるんだ……すげーとこだなぁ…婆娑羅学園…」
ハァァァァ……、と大きな溜息を付いたのは半兵衛だ。
口喧嘩ではまず負けることは無い半兵衛に真正面から噛み付く生徒がいるとは驚きだ。
左近の言う通り、改めて曲者揃いの学園だと物陰に隠れながら事態を見守る朱音も実感する。
「君達の主張は聞くに値しない。こちらの話も聞けないようだし、交渉は成り立たないだろうね。故に選択肢を与えよう。この後の公演を事前に提出した通りの内容にするのなら上演を許可しよう。それ以外は認めない。強制中止措置を取る」
半兵衛が述べた通り、演劇部が説得に応じる気配は無く、時間を費やしても決着するとは思い難い。
「開演時間までもう猶予はない。君達はあくまで婆娑羅学園の生徒。その活動の責任は生徒会にあるのだから、介入するのは当然だよ」
「ぐ……!こういう妨害が入らないようジョシーに撹乱を頼んだというのに……ジョシーは何をしているのですか!」
「ああ、官兵衛君なら大谷君が妙な動きを察知してくれてね。今は我々の雑用を快く引き受けてくれているよ」
「デコイ作戦失敗ですッ!サンデーはサンデーのままでは交渉の役に立ちませんし…!ならば宗茂ッ!」
「え、えぇ!?…………そ、その、手前は……!」
朱音が昼休み明けに出会った謎の手枷生徒を思い出している内にも時間は過ぎていく。
演目の内容を変えるのならばすぐさま打ち合わせしなければならない。セリフ回しに演出、生演奏もあるというならタイミングの修正も要るはずだ。
それとも本来の主張が叶わないのなら、いっそ公演をやめるのも有り得るだろうか。
「……わかりましたよ、内容を修正して上演してやります。ああ…ザビー様に面目が立ちません…!」
嫌で嫌で仕方がない。苦虫を噛み潰したような顔で宗麟は渋々と頷いた。
「本来はその顧問が止めるはずなのだけどね…。では開演時間まであと30分だったかな、頑張ってくれたまえ」
「30分…っ、ならこれから直ぐに僕達は脚本の修正に取り掛かります。お前達はさっさと消えなさい!」
「そうもいかないね。知っての通り、全ての企画は事前に内容を生徒会に通す必要がある。それは当日の変更であっても変わらないよ。そうだろう?そこの運営委員君」
おや、生徒会の集団の中に運営委員も混じっていたのだろうか………なんて思い違いも許されない、半兵衛の視線が隠れているつもりだった朱音に向けられていた。
「君もこっちへ来たまえ」
「あれっ、朝の先輩じゃん!お疲れっス!」
「………貴様だったか、この中学生に私の事を話したのは」
一瞬にして朱音の内心に言いたい事、言い逃れしたい事、言い訳したい事が溢れ返ったが、最優先は生徒会副会長様のお呼び出しだろう。
仕方なく演劇部と対立の渦中へ姿を見せると、美男子による表面上の笑顔に語りかけられる。
「運営のエース君、学園祭はどんなものであるべきかな?」
「自分の考えでよろしいですか?……いらしてくださった生徒のご家族や外部のお客様と、在学生が共に楽しめるイベントであって欲しいです」
「概ねその通り。幼子にも分かりやすい説明感謝するよ」
馬鹿にしてませんか?なんて突っ込む間もなく半兵衛は続けていく。
「演劇なんて正に、観客の感動と共感を以て成立する催しだね。しかし今の内容では自分達の事ばかりで、観客の事をまるで考えていない。そういう訳だから、」
ポン、と半兵衛の手が朱音の肩に置かれる。慶次などとは違い、この人物は不必要に他人…特に秀吉と比較的親しい朱音に接触したりしない事は既に承知している。
つまりこの手は逃げ出さない為の杭同然だ。
「献身的な運営部のエース君なら、脚本の修正にも一役買ってくれるだろう?」
「あの……、まだ巡回の持ち回りが、」
「おや、臨機応変に行動するはずの運営委員が、目の前の学園の風評を貶しかねない事態を無視するのかい?君なら相手に合わせた物言いが出来るだろうし。僕の言葉は彼等には少々難しいようだから……」
要はどう見ても反りの合わなさそうな集団との通訳に入れ。僕の負担を減らせ。半兵衛はそう言いたいらしい。
「準備段階から彼等と話す機会もあっただろうし、慣れたものだろう?秀吉の貴重な休憩時間を中断させない為にも……やってくれるね?」
トドメの切り札。敵対視するからこそツボも的確に折り込んでくる。
演劇部の面々と同じくらい朱音の顔も青ざめた。