15.当日、夕暮れ時
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お化け屋敷の見回りという想定外の事態に疲弊した朱音。落ち着くまで少々時間(10分程)を要した。遅れた分を取り戻すべく身体に喝を入れ立ち上がると、漸く移動を再開した。
「いや〜…ほんとごめんな…っ」
「きにしてません。それについてこなくてけっこうです」
「でも脚まだちょっとふらついてるだろ。元気になるまで手伝うからさ!」
息抜きになればと強引に誘った結果、思いの外へたらせてしまった慶次は責任を感じているらしい。
早足に進む朱音の後ろを、二重の意味で顔色を伺いながら慶次が付き添っている。
「困っている人がいたら助けに入ればいいんだろ?似たような事、俺も朝からやって来てたから頼ってくれよ!」
「どうぞご自由に」
「……やっぱ怒ってる?」
「おこってません」
真意は連れに合わせる気のない歩き方が示している。
生徒や来客で賑わうなか、階段を降りて外廊下を歩いていく。
「向かってるの第一体育館の方だよな……、今の時間の出し物は…っと、おお?」
学園祭のパンフレットを取り出して、イベント一覧を確認した慶次が驚いたような声をあげた。
慌てて朱音に話しかけようとしたが、先に中の音響が漏れて聞こえてきた。
『へい!へい!よう!兵!兵!酔う!』
ドゥンドゥンという響きと重低音に乗って、いぶし銀の如く、重くも凛とした声が聴こえてきた。
確かに朱音も巡回時のイベントまでは把握していなかった。
「島津先生のラップですね……」
渋いボイスとノリノリの重低音と共に歓声が聞こえてくる。中々の盛り上がりを見せているようだ。
「そういえば、こないだ忠朝が家康に勧誘されてたんだよな?あれは結局どうなったんだ?」
「……どうでしょう。わたしが聞いても兄上教えてくれませんもの」
家康のようにグイグイ問い詰めようとしても、妹をあしらう事には慣れているため朱音では上手く聞き出せなかったのだ。
そうこうしている間に体育館入口まで到着。
中まで見回る必要はなく、あくまで周辺を見て回れば良いのだが、まぁ漏れてくる音を気にせずにはいられない。
現在進行形で本番が展開されているわけだが結果は如何に……。
『次は儂と忠勝だ!今日は感謝を伝えたいんだ!どうか聞いてくれ!た・だ・と・もぉおおおおおおおおおっ!』
『ギュギュギュギューーーーーーン!!』
ワァアアアアアアア!!と一際歓声が大きくなった。
この異様な盛り上がりは事情を知る在学生達によるものだろう。
「え…え!?兄上本当に舞台に立ってます!?」
「ど、どうだろ…?その割には遠くにいる人への呼び方みたいっていうか…!」
慶次と一緒になって変に焦り出す朱音。やはり中に入ってしまおうかと思っていたが…。
「またお前達ですか!何度僕たちの邪魔をすれば気が済むのですかッ!」
怒りと焦りの混じった声が聞こえてきた。そちらを見ると、ステージ裏に近い入口の所に例の演劇部の面々が集まっていた。
そして彼等と対峙しているのは………生徒会役員達だ。
「うわ〜〜あっちも大変そうな予感……!どうする、朱音?」
「ええと…、わたしは運営側なのでトラブルっぽい演劇部の方を見てきます。慶次は体育館の中へ……いえ、そちらは別にトラブルではないと思いますが…!」
「了解!家康達の様子見てくるよ!」
慶次が居てくれるため二手に別れて動くことが出来る。
体育館は彼に任せ、朱音は真っ直ぐ走り出した。