14.当日、午後
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「これは……紅葉?いえ、手にも見えます……、揺らめきは炎に一番近い形……湯気の交わり方は…」
鶴姫は写真を凝視しながらどこから出したのか、分厚い辞典のページを素早く捲っていく。
慎重に確認しているようだ。やがて結論が出たのか辞典を閉じると、再び朱音を見上げた。
「うんうん、やっぱり!もう間もなくですよ!」
「何がでしょう?」
「紅葉は変化と成長、手のひらは他者との繋がり…すなわち縁。紅葉の赤は炎の揺らぎ形と相成って、実現性が高いと云われています」
「………つまり?」
「自分を変えてしまうくらい大切な人に巡り会える、という事ですね!」
「大切な人……、」
「はい。以前の結果も踏まえると、朱音ちゃんにとって本当に、本当に大切な方だと思います」
簡易占いということもあり、あくまで平たく解釈出来る内容とも言える。朱音は占いは真剣に信じるタイプではないが、ただ目の前の鶴姫に妥協する姿勢は一切なく、とても真摯に向き合ってくれている事はわかる。
「既にお会いしている人の可能性もありますよ。他の人といる時とは違う心地になるような……どなたか心当たりはありますか?」
「う、う〜ん……」
「さて、お時間もない事ですし、最後にこちらを。運勢アップのおまじないを掛けた角砂糖です!縁の相が強い朱音ちゃんにはハート型を」
飴玉のように閉じられた透明な包みの中に可愛らしいハート型の角砂糖が入っていた。
紙コップの蓋と共に鶴姫から手渡されると、ミルクをいれる場所を案内してくれた。
「どうか幸運が訪れますように。応援していますからね!あとお仕事がてら占い喫茶の宣伝もよろしくお願いします♪」
「は、はい…!ありがとうございました」
言われた通り、マンツーの割にはスピーディーに占ってもらえた。滞在時間は5分にも満たない程だったが、本格的にみてもらったような気分だ。
苺のミルクティーの蓋を閉め、教室を出る時振り返ると、ちょうどお市と長政のメニューがテーブルに届くタイミングだった。
上部に真っ白なホイップクリームとチョコソースが掛けられており、更にはハートのチョコレートが飾られた所謂胸きゅんドリンクだ。コップにも色違いのビーズデコレーションがしてあるのだと思ったが、よく見ると…。
「わぁ、お揃いのブレスレットになるんですね…!」
「そ、そこ!何を見ているッ!早く仕事に戻らぬか!」
「またね、朱音……今度教えてあげるからね、ふふ」
野次馬よろしく本当に馬に蹴られる前に朱音は占い喫茶から退散した。
***
学生とはいえ、巡回係が飲食しながら徘徊しては印象が悪いだろうか。
そこで通行の邪魔にならないよう、窓際に立ち止まってひっそりとミルクティーを飲むことにした。ミルクを入れたお陰でちょうど良い温かさになっており、苺の甘い香りに癒される。
何気なく3階の窓から外を見ると、少し離れてはいるが龍虎DININGが見えた。
昼時を過ぎても大盛況のようで、相変わらず行列が出来ていて、部員達も慌ただしく動いているようだ。
(あれは猿飛さんかな…お昼過ぎから合流されたんですね。真田くんは伊達くんと隣りにいる…?また何か言い合ってるのかな?畑の方に歩いているのは片倉さんっぽい…、)
あの目立つ出で立ちの面々に視線が引き寄せられて、先輩や友人達を朱音は微笑みながら見守る。
(占い同好会に、元親さん達の展示……他にも準備段階から色んな部活や企画店を見てきたけれど……沢山関わらせてもらった龍虎DININGはちょっと贔屓したくなってしまうな)
褒賞が豪華ゆえ、何処も企画店グランプリを狙っている。全生徒と来場者に投票権が与えられており、学園祭終了直後から集計が始まる予定だ。
運営側の一員として公平な目で見るべきという意識はあるものの、まだまだ朱音も一介の高校生。こっそり心の中で彼らにエールを送ると、次の場所へ向かう事にした。