14.当日、午後
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
場所は変わり、再び校舎内を巡回する。
午前とはまた別の範囲の見回り故に、何処に行っても真新しさを感じられて朱音は満足気だ。
生徒会や運営部の生徒は皆、巡回エリアが割り振られているが、目立ったトラブルが無ければ企画店を純粋に見て回る事も許されており、仕事をしつつ楽しめる仕組みだ。
完全に自由に動けるのは各々の休憩時間のみだが、結果的に学園内全てを回れるよう振り分けられている。
何処の企画店も賑わっていて、中には教室の外まで長蛇の待機列が出来ているところもあるようだ。
『最後尾』と書かれたプラカードには、占い同好会と記されていた。
「鶴姫さんの所でしたか」
以前慶次からよく当たると聞いていた事もあり、絶大な人気を誇っているようだ。中の様子を行列越しに覗いてみると、ここにも見知った顔を見つけた。
「こ、恋占いなど…!こんな人前でッ!」
「でも市……長政様との運勢、占ってもらいたい…今日はクリスマス・イヴだし……最後の年だし……」
学園内公認カップルと名高い二人が微笑ましいやり取りをしていた。
お堅い彼氏こと長政は顔を真っ赤に染めて、早口でごにょごにょ言っている。占いに興味が無いというよりは単純な気恥ずかしさからの抵抗のようで、二人の間にすかさず鶴姫が説得に入ってきた。
「そうそう♪せっかくのクリスマス学園祭なんですから、素敵な思い出作りましょうよ!ほら、カップル限定メニューもあるんですよ!」
「かわいい…!市、これ飲みたい…長政様と一緒に……だめ…?」
「ううぅ……ええいッ!」
恋にときめく者ならば今日ほど絶好の機会はない。普段より熱心に誘うお市に、長政はついに首を縦に振った。
「ではではツインココア、入ります〜☆…って、あら、そこにいるのは朱音ちゃん!」
注文を取って振り向いた瞬間の鶴姫に気づかれてしまった。
見守りもとい覗いていたのがバレてしまい、どうしようか迷っている内に鶴姫が教室の外まで来て朱音の両手を掴んでしまった。
「来てくださったんですね!嬉しいです!是非朱音ちゃんも占って行ってくださいねっ」
「い、いえ!今は運営委員の巡回中で…あまり一箇所に留まる訳には…」
「こっちの列は教室内で飲食する方の待機列なんです。テイクアウト用なら直ぐに渡せますからっ」
ぐいぐいと教室内に連れ込まれてしまい、お市と長政にも完全に気づかれてしまった。
照れくさそうに笑うお市と一部始終を見られていた事を察し狼狽える長政に、朱音もぎこちない笑みを返す他無かった。
*
「お持ち帰り仕様でも、ちゃあんと占えるんですからね☆」
時間が無いという運営委員をもてなすべく、鶴姫は早速机の上に紙コップとティーバッグ、ケトルなどを準備していく。
「まずはお好きな茶葉を選んでくださいな。紙コップにお湯をを注いでから12秒待って、飲み物から出てくる湯気の形で運勢を……って朱音ちゃん、ちゃんと聞いててくださいっ」
「す、すみません…つい気になっちゃって…、」
いざお目にかかれるのならと、お世話になってる先輩カップルの様子をどうにも見守りたくなってしまい、時間がないというのに鶴姫の話を上の空で聞いてしまっていた。
普段興味がないように振る舞うよう意識していたが、結局朱音自身も思春期の例に漏れずだ。
視線の先の二人のリアクションは正反対だ。恋人らしい事が出来ると嬉しそうに長政を見詰めるお市に対し、長政はお市を見たり、周りの視線を気にしたり、後輩に見世物ではないぞと視線を投げかけたりと忙しそうだ。
「もうもうっお邪魔しちゃ駄目ですよ!さ、朱音ちゃんはここから好きな茶葉を選んでくださいな」
「は〜い…、どれにしよう、」
差し出されたケースには、10を超える種類の茶葉が用意されていた。朱音は紅茶に特にこだわりがないため、英語表記の多いパッケージが並ぶと迷ってしまう。
そういえば本日はクリスマス・イヴ。クリスマスといえばケーキ……ケーキの……。
「この苺のイラストの紅茶にしようかな…」
「それは苺とアールグレイの茶葉です!これ、ミルクティーにするともっと美味しくなりますから、占いが終わったら是非ミルクも入れてみてください!」
「へぇ…!美味しそうです、」
「決まりですね☆では私がお湯を注ぎますから、ご自分のタイミングで12秒数えてから、このスマホで湯気を撮ってください!」
ティーバッグをセットした紙コップを、黒背景のコの字型スタンドの中に置き、朱音に占い同好会所有の端末を渡すと、鶴姫は早速湯を注ぎ始めた。
言われた通りに、心の中で12秒数えてから湯気が写るように撮影ボタンを押した。
「実はまた占えるの楽しみにしてたんです。朱音ちゃんには強い相と縁が出ていましたからね」
慶次に放課後学園案内してもらっていた頃、確かにそう言われていた事を朱音も思い出した。
端末を受け取った鶴姫は早速湯気の形の分析に入った。