14.当日、午後
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学園祭が始まり、留まることの知らない賑わいはグラウンドに出ても相変わらずだ。
その中でも特に活気を見せているのは……今から朱音達が向かおうとしている場所だ。既に大勢の人で列を作っているのが遠くからでもわかった。
入口には『龍虎DINING!!』と書かれた大きな看板。広々としたスペースで展開されているのは、今年大注目のサッカー部と野球部の合同企画店だ。
先程出会った卒業生の女性の目的地もやはりここだった。自らも並ぶ前にお店の横から顔馴染みに挨拶をする事にした。
「お疲れ様です。大盛況ですね、真田君」
「朱音殿!お陰様で……、な、なんと!?」
顔を覗かせた朱音に笑顔で応えた筈の幸村だが、その隣の人物を見るや否や驚愕に染まった。
どうしたのかと朱音は首を傾げ幸村の視線の先の女性を見遣るが、彼女は先程と変わらずにこにこと微笑みながら頬に手を添えている。
「あらあら……どうされたのです?」
「ひ、……ひかり殿ぉッ!!!?」
狼狽した幸村の声にサッカー部員の大半が視線を寄越してきた。幸村と同じく皆驚いた表情をしている。
どよめきの中、幸村がどもりながらひかりと呼ばれた女性に問いかける。
「な、なな、何故ひかり殿が、こ、ここに……!」
「OBですもの。学園祭に顔を出すくらい普通でございましょう?」
「こちらのひかりさんとはさっき校舎で出会ったんです。目的地が同じでしたから、一緒に来たのですが……真田君のお知り合いでしたか?」
「し、知り合いも何も!この方は去年までサッカー部のマネージャーをされていた方でござる!それにお館様の……!」
しどろもどろの幸村を面白がっているのか、それとも大して気に留めていないのか、ひかりは変わらず微笑んだまま緩やかに朱音を連れて歩き出す。
「まぁまぁ、そう畏まらず。では私達も並ばせていただきましょうか?」
「は、はい。行きましょう!楽しみにしていますね、真田君」
「う、うむ……っ!」
お昼時なのもあり待機列は着々と延びてきて、両部員の多くが列形成に動き出している。
他の飲食系の企画店の場所とは離れた非公認菜園の側での設営だが、それ故に有する広々としたスペースを活かし、混乱なく対応出来ているようだ。
列が進み、メニュー表が見える位置にまで来ると、改めて何を食べようか朱音は吟味する。
サッカー部はほうとう鍋で、野球部のメインは野菜カレーだったはずだが…。
「えっ!よくばりセットなんてあるんですか?」
それぞれ違ったテイストの料理。どちらにしようか迷う人を見越したかのように、両方が半々で食べられるメニューが設けられていた。
本来なら一緒に食べる印象のない料理だが、このお祭りムードの中では十分アリな贅沢メニューだ。
「本当に正式に同盟を組まれているのですねぇ。せっかくですから私もこのセットにしてみますわ」
常にライバル関係の両部の事だから、どちらの注文が多いか競いそうな雰囲気があったが、実際は顧客の需要をよく考えた采配を振るっているようだ。
もしお客さんの立場だったら。どんな物がほしいか、どんなアプローチに惹かれるか……。
そう言ってたのは……、
(もしかして、これも猿飛さんのアイデアなのかも……?)
ただのほんの一言の提案から、よくぞここまで広げたものだ。
店の奥、小十郎が発案したイートインスペースも賑わっていて、多くの人がよくばりセットを頼んでいる事がわかる。
色々眺めているとやがてのお待ちかね。注文口までたどり着いた朱音は笑顔でオーダーをした。
「よくばりセット2つください、真田君」
「承知致した!真心込めて準備致しましょうぞ!」