13.当日、午前
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「ふふ。相変わらずなのですねぇ、この学園は」
今の放送は何だったんだと、人々のどよめきが残るなか、くすくすと淑やかに微笑む女性が朱音の目に入った。
緩やかな仕草に見とれるように眺めていると、はたりと目が合ってしまった。彼女は腕章の辺りを一瞥した後に、朱音の方へ歩み寄って来た。
「こんにちは。今年の運営委員さんですね」
「はい…!その、何かお困りですか?」
「いえいえ、卒業生ですから特にそういう事ではないのです。ただこの賑やかな雰囲気が懐かしくて、つい生徒さんに話しかけてしまって……あら、あなた二年生?初めてお会いしますね」
上履きの色は学年毎に分けられていて、朱音の学年が直ぐにわかったのなら、比較的最近の卒業生なのだろう。
確かに目の前の女性は大人びた雰囲気だが、自分とそう変わらない年頃と見受けられる。
「はい、9月からここに転校してきた者です」
「まぁ、それなのに運営委員を?頑張っておいでですのね」
「いえ、私はそんな!皆さんに助けてもらいながらやっとで…!」
「実は私、先程も貴女がお客様を案内している所を見ていたのです。とても丁寧で馴れたご様子でしたね。何より楽しそうにされていて」
「そ、そうでしょうか……」
初対面の相手に褒められてどう謙遜したものか、少し慌ててしまう。
お世辞なのかもとも思ったが、緩やかな微笑みからは不思議とそんな感じはしない。落ち着いていて包容力のありそうな人で、朱音は憧れに近い感情を覚えた。
朱音が女性にお礼を言おうとした瞬間、ちょうど正午を告げる時報が鳴った。
今からは学内巡回は暫くお休み。いわば自由時間だ。
時報が聞こえた事で女性は朱音の足を止めてしまっていたことに気づいたのか、丁寧に頭を下げて別れを告げる。
「お仕事お疲れ様です。私もそろそろグラウンドの方へ行きますので、これで失礼致しますわね」
「グラウンドって、もしかして………あのっ」
確かに人見知りはしない方だが、不用意に距離を詰める性格でもないはずだ。
けれどそう考える頃には既に声を掛けてしまっていた。朱音自身でも少し驚いていた。