13.当日、午前
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「ん、どしたの?」
「さっきから緊張してガチガチに固まってるんだ。どうにかしてやれ」
「ぷ、真田の旦那みたいだねぇ。どうしちゃったのよ真面目ちゃん」
「……キンチョしてません」
どう見ても楽しそうな様子の佐助に若干腹立たしさを覚えて、朱音の頬がぷくっと膨らんだ。
佐助も一緒になってカチコチの背中を撫で始めるが、それでも気が紛れないようで朱音の眉間には皺が寄ったままだ。
頑なな様子に佐助はやれやれと息を吐き、撫でていた手をピタリと背中に当てた。
「お固く構えるのもいいけどさ、楽しみなよ。その為に今日まで準備してきたんでしょ?」
からかう様な口調だが、視線はひどく優しい。思えばどうしてこんなにも気にかけてくれるのか疑問に思いつつ、見護るようなあたたかな視線に朱音の緊張が自然と和らいでいくのがわかった。
「………はい」
「そうそう、先輩からの助言は素直に受け取るべしってね」
「あの、猿飛さん、」
「これより本年度婆娑羅学園、学園祭開始宣言を行う!」
そうこうする内に、いよいよ生徒会長たる秀吉が声を張り上げた。
門前に待機する来客達の期待に満ちた視線を一身に受け止める彼の瞳にも高揚が宿っている。学園内全体に届くよう胸元のピンマイクから各所のスピーカーに繋がっている。
「半期、あるいは去年からこの日の為に仲間と共に研磨し、準備を進めてきたであろう。生徒諸君は悔いなきよう、今日までに備えた全てを発揮せよ!」
秀吉が大きく手のひらを振り上げたのを合図に、校門の整列が解かれると来訪者達が一斉に移動し始めた。
秀吉と半兵衛の視線を受け、生徒会役員と運営委員も一斉に持ち場へ動き出す。
「いってらっしゃい。あとでウチらの部にも遊びにおいでよ。売上げの貢献お待ちしてますってね」
朱音の肩を叩いた佐助もカメラを構えて、早速来訪者の様子を記録し始めている。
「はいはい、また後ほど」
いつの間にか心地よく思える佐助の軽口に朱音の緊張はすっかり解けていた。迷わず巡回地へ駆け出して行く。
目的果たせりといった様子でかすがも、2人を見守り終えると素早く移動した。
******
「すみません、スタッフの人ですか?」
制服に留めた腕章は存外来訪客の頼りになるようで、これで本日3度目の呼び掛けに朱音はすぐさま振り返った。
「はい、何かお困りですか?」
「ここの企画店に行きたいんだけど、この階にないみたいで…」
新聞部の風魔が製作した学園祭のパンフレットも大活躍だ。高校の学園祭にしてはやや分厚く、どのページにも情報がぎっしり詰め込まれている。それを開き他校生と思われる私服の男子生徒が指す企画店を朱音も確認する。
「この企画店はここではなく、南棟の2階なんですよ。少し距離がありますので連絡口までご案内しますね!」
「そっか棟が違ってたのか………て、えっ、いや、そこまでしてもらわなくても!」
「いいんです。これがスタッフの仕事ですので!この道は混んできていますので、あちら側から行きましょうか」
運営委員に入ってから連日を駆け回ったお陰で、学園内の構造と企画店の位置もしっかり頭に入っている。自信を持って案内を始める元転校生は、道に迷っていた彼にとって頼もしく見えたという。