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「ええ。最初は冀州の袁刺史を訪ねたんだけど、まあ色々あったようで…。司徒のお役所の推挙もお断りしたのに、一体どういう心境の変化かしら。たまに書簡が届くけれど、将軍のことは何も書かないから、私はよく知らないのよ」

 夫が今まで散々断っていた仕官を急に受けた理由が判らない、とぼやく美帆だが、元直も孔明も寝静まった後、侍女の丁杏が口にした言葉のほうがより不可解なものだった。

「お嬢さま、最近は筆をお持ちになる時間が少なくて、お書きになるのは郭奉孝さまからの書簡のお返事くらいなのですよ」

 この時、叔母の中には知識人を時めく女流作家の今恵班はおらず、奉孝夫人として主不在の家を守り、子を育てる一介の母親がいるのみであった。
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