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 5、6年ぶりに会った美帆は、物腰柔らかく、落ち着いた母親になっていた。

周囲の度肝を抜くお転婆娘の面影は無く、また結婚を嫌がった過去も水に流したように幸福な様子が見て窺えた。

「お嬢さまあ、今はこれくらいしかお出しできませんよお」

「いいわよ、杏。さっ、つまらない物ですが、どうぞ召し上がって」

 我々が美帆の家で最初に食べたのは、保存食だった。

下女が2人いたようで、かつて龐家に仕えていた丁杏の他に、台所にもう1人いるのが分かった。

ところで、美帆は優秀だが無官の書生と結婚したはずだ。

相手はどこにいるのだろう。

それとなく訊ねると、答えは簡単に返ってきた。

「あの人なら、じゅん尚書令しょうしょれいさまの推挙を頂いてそう将軍に仕官しているので、今は許にいるわよ」

「将軍…曹孟徳もうとく殿か?」
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