Chapter.5
夢小説設定
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ループしていると気づくのに時間はかからなかった。
だが自力でここから抜け出すこともできないし、ループと違うことをすれば強制的に最初からやり直させられる。
夢だとわかっているのに、彼に殺されるシーンを何度も見るのは辛かった。
そのうち、実は彼は本当はおなまーえにこんな思いを抱いているのでは、とすら感じてきた。
「ねぇおなまーえ、話があるんだ」
「……なに、ハウル」
何度も交わしたこのやり取り。
おなまーえの顔は憔悴しきっていた。
「もう、僕と君のこの関係は終わりにしないか?」
「…うん」
また変わらないショックが押し寄せる。
もういい。
彼にとって私は要らない存在なんだ。
彼に必要なのはソフィーなんだ。
私には彼女のように人を惹きつける魔法は使えない。
もう、いいんだ。
諦め気味に目を閉じた。
「好きだ。おなまーえのことが。」
「……え?」
何が起きたのかわからなかった。
ループと違うことをすれば、強制的に最初からになる。
でも今回はリセットされなかった。
「初めて見た時から気になってた。放課後、教室の隅で楽しそうに魔法具を作っている姿を見た時から。」
『ねぇ、君何作ってるの?』
かつて、学校一の魔法使い、サリマンにすらそのセンスを見込まれた彼に話かけられるなんて夢でも見ているのかと思った。
よく顔を見たことがなかったが、幼いながらも綺麗な顔立ちだなと。
男のくせに綺麗だなんて妬ましい、とおなまーえはツンとした態度をとった。
『……私は"君"なんて名前じゃないよ、ハウル君』
『じゃあ名前教えてよ!』
『……おなまーえ』
『おなまーえ!素敵な名前だね!』
「でも僕には告白するなんて度胸、なかったからさ。今も結構無理してる。」
あぁ、これは正真正銘のハウルだ。
臆病者で、弱虫で、格好つけたがり屋で、夢の中でくらいしか告白できないハウルだ。
「……ありがとう」
助けに来てくれてありがとう。
私の人生を色付けてくれてありがとう。
私を好きになってくれてありがとう。
おなまーえは悪夢から解放された。
****
「うぅう…ゔあああああっっ!」
「ハウルだめ!罠よ!!」
一方その頃、現実世界ではハウルがサリマンの魔法で悪魔の姿になり代わろうとしていた。
おなまーえを抱く腕は鋭い鉤爪状になり柔らかい体に食い込んでいる。
「ハウル!ダメだってば!」
ソフィーの声は理性を失いつつある彼には届かなかった。
(お願い、誰か…!)
「私のこと助けておいて自分が我を失ってるだなんて、かっこ悪いよ?ハウル。」
少し掠れた眠そうな声が響いた。
ハッとしてソフィーは彼の腕の中を見る。
額にびっしょりと汗をかいたおなまーえが目を開けていた。
彼女がハウルの頬に手を添える。
同時にサリマンが杖を大きくふるって投擲槍のように投げた。
「落ち着いて。"ハウル君"。」
ガバァッとハウルは横にいたソフィーの肩を抱き、一気に飛び上がった。
この空間は所詮幻術。
物理空間までは歪められていない。
やがて天井のガラスにぶち当たり外に出ると、彼らは小型の飛行機に乗り込んだ。
「掴まって!」
正気に戻ったハウルは素早い動作で飛行機を動かす。
「ソフィー前へ移れ!」
ソフィーが前の席、荒地の魔女が後ろの席、おなまーえはハウルの腕に抱かれたままだ。
サリマンの使いの犬が耳で飛行して荒地の魔女の膝に乗り込んだ。