Chapter.5
夢小説設定
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「あーあ……ソフィーはみんな連れてきちゃったなあ」
「重量オーバーだねぇ」
「わんちゃん」
「ヒン!」
荒地の魔女が嬉しそうにヒンを撫でる。
「ヒン、あんたはサリマンの回し者でしょ。……しょうがないわねぇ、今更おろせないじゃない。」
ソフィーは後ろの席のヒンを睨みつけた。
なんだかんだ言いつつ空中に放っぽり出したりしないところが彼女のいいところだ。
「ソフィー、舵を取れ」
「えー!できないわよそんなこと!」
「六時の方向、敵船多数」
「ほら、追いかけて来た!」
「えっ?」
ハウルの肩越しに後ろを確認すると、銃を持った兵隊を乗せた小型戦闘機が多数飛来していた。
「僕とおなまーえが相手をする。ソフィーはこのまま荒地の城まで飛ぶんだ。」
「えー!そんなの無理よ!」
「大丈夫、方向はその指輪が教えてくれるから、ソフィーさんは心の中でカルシファーを呼んで。」
「カルシファーを?」
ソフィーの指輪からポゥと淡くて細い筋が出る。
自身が望んだものを指し示す指輪。
こんなところで役に立つとは、作成者のおなまーえも鼻が高い。
「光の差す方へ飛べばいいんだ。夜には着く。」
「もう!ハウルが来るなら私が来ることなかったのよ!」
「ソフィーがいると思うから行けたんだ。あんな怖い人のところへ一人で行けるもんか。」
「……弱虫」
「おなまーえだって結構ピンチだったじゃないか。」
「助けてくれなんて頼んでない。というかあなたの方がピンチでしたー。」
「もしかしてあの人の洗脳解けてない?おなまーえはもっと素直な良い子だと思ったのになぁ。」
そう言って彼は舵から手を離した。
「あぁあああ、離さないで!」
ソフィーが慌ててハンドルを回す。
水平に保っていた機体が大きく傾いた。
「うわわわーー!!」
危うく時計塔にぶつかるというところで彼女は反対方向にハンドルを回した。
なんとか元の状態に戻った飛行機は時々傾きながらも真っ直ぐに飛ぶ。
「上手いじゃないか!」
「どこが!」
「ちょっとだけ引き離せたみたいだよ」
ハウルに抱えられている故、いつの間にか後方担当になったおなまーえが冷静に告げる。
「5分間だけ見えなくするから、その間に行きなさい」
「うわわわ…!」
ハウルが横に手を切ると、今自分たちが載っている飛行機と全く同じものが、分裂するように現れた。
おなまーえとハウルが乗っている方の飛行機が幻術だ。
サリマンならともかく一般の兵には幻術に対する耐性がない。
これならソフィーたちは十分な距離を稼げるだろう。
「ハウルー!おなまーえー!」
離れていくソフィーの叫び声が聞こえたので、2人は敬礼のポーズをして応えた。
少しフラフラしていたが、彼女は意を決したように前を向いて舵をぎゅっと握っていた。
「………で、どうすんの、ハウル。私今ほとんど役立たずだけど。」
「問題ないさ。ところで、僕の一世一代の告白は聞いてくれた?」
「夢の中でしか言えないのがあなたらしいね」
冷たい風が心地よい。
おなまーえの黄金色の髪とハウルの夜色の髪がたなびいた。
「………よく考えてみたのよ。私ハウルのことどう思っているかって。」
「…うん」
「ハウルはかっこいいし、優しいし、私の望んだもの何でもくれた」
「………」
「多分もう私の人生であなた以上の人なんて現れないんだなって思うよ」
「………」
ハウルは静かにおなまーえの言葉を聞いていた。
「それを踏まえた上で…」
「………」
一瞬の沈黙が永遠の時に感じられた。おなまーえはスッと息を吸った。
「うん、ないわ」
「やっぱり?」
キッパリと言い放ったおなまーえを見て、ハウルは悲しげに笑った。
それを見ていられなくて、おなまーえは後方を追いかけてくる敵船を見ながら口を開く。
「だってハウルと付き合ったらすっごく大変そう。絶対毎晩のように女の子侍らせて遊ぶでしょ?」
「今はもうおなまーえ以外とは手を切ったよ。」
「うまく別れられなくて女の子が怒ってうちに来たりするでしょ?」
「引っ越しする。おなまーえに危害は加えさせない。」
「……どうせ私のことなんて魔力供給のための充電器くらいにしか思ってないんでしょ」
「おなまーえ」
そっぽを向いていた彼女の頬にハウルはキスをした。
「っ!」
「僕はおなまーえのことが好きだ」
「その言葉だって、誰にでも言ってるんでしょ」
「初めて会った時から、本気で好きだった」
嘘を見抜くのは決して得意ではないが、今の彼は嘘をついていないと、何故か確信できる部分があった。
「……口先だけじゃない?」
「うん」
「魔力が欲しいだけじゃない?」
「うん」
「体目的でもない?」
「うん。僕は、おなまーえを世界で一番幸せにしたい。」
穏やかな表情。
憑き物が落ちたような顔で彼は笑った。おなまーえもそろそろ素直になる時だ。
誠心誠意の告白を無碍にしてはいけない。
彼女は1度目を伏せ、そして潤んだ目で彼の藍色の目を見つめた。
「……いいわよ。裏切ったらタダじゃ済まさないからね。魔具師の名にかけて、全力で復讐するから。」
「肝に命じておくよ」
そろそろ5分が経過した頃だ。
追っ手も幻術に気づいたようで二手に分かれる。
「いくよ、おなまーえ」
「はいはい。振り落とさないでね!」
鳥の姿となったハウルの首後ろに座り直した。
ハウルが敵を翻弄するように旋回する。
風圧でソフィーの店で買った帽子が吹き飛ばされたが、彼女は振り返らず真っ直ぐ前を見ていた。
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やっと付き合いました。実はこの二人の関係めちゃくちゃ気に入ってます。正直他の夢より関係性はどストライクかも…。
2018/08/07 少女S