第6夜 千年の騎士
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第6夜 千年の騎士
#アニメ16.17話もどき。
#話の構成上大きく改変しております。最早半オリジナル。
それは今から1000年も昔の話。
ローマの端の地を治めていた領主様には、サンドラという名の、それはそれは美しい姫君がおられた。
16歳ともなると、その神々しいまでの美しさは多くの人の話題となり、遠くギリシャ・オリエントの国々からも、姫を妻に迎えたいと望む男たちが海や山を越えて雲霞の如く押し寄せた。
だが姫はどんなに良い縁談であろうと、決して首を縦に振らなかった。
それでも言い寄る男たちに、姫はこう申された。
『わたくしは、この世で一番強い男の妻になります』
そしてその力を試すために、領主家に仕える剣闘士・ビットリオと闘うように言われた。
ビットリオは闘った。
世界中から集まった武芸自慢の男たち相手に闘い続けて、一度たりとも破れなかった。
――その闘いは姫が病でこの世を去ってからも続き、1000年後の今も続いているという。
****
嵐。
雷が鳴り、神田を打ち付ける。
かつて栄えたコロッセウムにはただ1人の見物人がいるのみ。
階段も柱も、長い年月の間放置され風化していった。
円形の闘技場の中央では黒髪の美しい男と、いかつい鎧を纏った男が対峙している。
黒髪の男は細い刀に手をかけ、ゆっくりと鞘から抜く。
鎧の男は、その屈強な身体に似合いな大剣を構える。
ギザギザのその刃は多くの挑戦者を駆逐してきた。
「サンドラ姫の命令により、お相手致す」
見た目よりずっと繊細な声は、とはいうものの覚悟を決めた意志の強い声であった。
向かい合い、対照的な2人は互いに鋭い闘志を燃やす。
――ビシャアァン
空を引き裂くような雷が落ちる。
「来い!」
戦いの火蓋は落とされた。
長髪の男が地面を蹴る。
ぬかるんだ闘技場を物ともせず襲いかかる。
「はぁぁああああ!!」
「うぉぉおおおお!!」
勇ましい声。
ぶつかり合う刀と大剣。
打ち付ける雨。
眩しい雷。
――それらをただ1人、深紅の瞳が冷たく見下ろしていた。
****
「神田とおなまーえが行方不明…?」
執務室に呼び出されたアレンは思わぬ話に驚きを隠せなかった。
司令塔であるコムイも少し困惑しているようだ。
エクソシストとして何年も活躍している神田とおなまーえが行方不明だというのだ。
ただ事ではない。
「確か、ローマに行くって…」
「そう。ローマ郊外の遺跡で発見されたイノセンスの回収に向かってもらったんだが、同行していた探索部隊とともに一週間前から連絡が取れなくなってね。彼らが姿を消した闘技場の周りにはアクマがたくさんいて、エクソシストでなければ近づけないんだ。」
イノセンスのあるところには必ずアクマがいる。
2人はアクマに襲われてしまったのだろうか。
「そこでアレンくん、君に行ってもらうことにした」
「…わかりました」
まだエクソシストとして日の浅い自分が力になれるかはわからないが、2人のことが心配なのは本心である。
アレンははっきりと頷いた。
****
任務にはリナリーも同行した。
巻き戻しの街での一件以来、まともに顔を合わせるのは久しぶりであった。
汽車の中で無事仲直りをした2人は、目的の街の資料を読む。
「1000年前から闘い続けている、ローマの剣闘士?」
「似てるでしょ?あの、500年も歌い続けたララに。」
「それじゃあ、この剣闘士も人形なのでしょうか?」
「まだ断定はできないわ」
マテールの街でアレンはララという人形の少女に出会った。
彼女は人が自分から離れていっても、イノセンスを核に歌い続けた。
「イノセンスが生身の人間を1000年も生かし続けられるのかどうかもわかってないし」
「……適合者の可能性もあるわけですよね」
「可能性はあるけど、今はなんとも。もし彼が存在するとしなら、それ自体が奇怪現象とも言えるし。」
資料には闘技場に入っていったアクマが、そこから出てこなかったと書かれていた。
それはすなわちイノセンスによって退治されているということだ。
イノセンスは誰にでも扱えるものではない。
扱えるのは、エクソシストだけ。
この剣闘士がアクマを退治しているならば、彼もまたエクソシストである。
アレンとリナリーは顔を見合わせた。
「多分兄さんもそう考えたから、」
「神田とおなまーえを派遣したんですよね」
だが2人とは連絡が途絶えた。
あの2人がアクマに引けを取るとは考えにくい。
ならばこの剣闘士と何かあったのだろうか。
アレンとリナリーの不安は募るばかりであった。