第5夜 師弟
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第5夜 師弟
呼び出されたのはおなまーえと神田とアレンだった。
いつしかのマテールの街の時と同じメンバーに、彼女は眉を顰めた。
「また3人ですか?」
執務室に入って早々、おなまーえは問いかける。
だがコムイは首を横に振った。
「いや、任務にはアレンくんと神田くんで行ってもらう」
それもそれですごく心配だ。
現に神田もアレンも嫌そうな顔を、最早隠してすらいない。
「おなまーえちゃんには別件。任務というよりはお願いかな。折り入って頼みがある。」
「いいですけど…」
仕事に関しては抜かりないコムイが、折り入って頼みがあるとまで言ったのだ。
余程の依頼なのだろう。
「ほら、2人は支度したらすぐに出て!」
「…わかりました」
「チッ」
「いってらっしゃいませー」
半ば追い出す形でコムイは手を振る。
非常に不本意と言わんばかりに、2人は睨み合いながら部屋を出て行った。
マテールの件で少しは親密度を上げたかと思ったが、どうやらそうではなかったようだ。
「そういえば、アレン大丈夫なんですか?すごい怪我だったって聞きましたけど。」
あくまで噂に聞き及んだだけだが、先日リナリーとアレンの向かった任務先で手ひどい怪我を負ったらしい。
リナリーに至っては目を覚ましていないとかなんとか。
アイドル的存在の彼女が命に別状はないとはいえ、意識不明の状態なのだから、教団内も心なしかどんよりとしている。
「ああ。巻き戻しの街って言ってね、これはアレンくんが書いてくれた報告書だ。目を通してくれ。」
渡された報告書には拙いながらもその時の様子が細かく記されていた。
巻き戻しの街。
そこで起きていた怪奇現象は、時間が巻き戻り、10月9日を何度もくり返すというもの。
なんとその数34回。
イノセンスの力でなんとか街に入り込めたアレンとリナリーは、繰り返す世界の中で唯一異なる行動を取れたミランダという女性に出会う。
そしてアクマやノアに襲われた。
「……ノアまで出てきたんですか」
「ああ、我々も驚いている。2人が出会ったノアは少女の姿をしていたが、人間離れした能力を持っていたらしい。」
「そろそろ千年伯爵も本腰を入れてきたと。」
「いや、どうやらそうではないみたいだ。彼女、去り際に『次は千年公のシナリオの中で』と言っていた。あくまで彼女は独断で今回の襲撃を行ったと考えるのが妥当だろう。」
「……"時の破壊者"に会いにきたってわけですね」
ペラリと資料をめくる。
次のページにはミランダと時計の関係について、アレンが知る範囲が書かれていた。
イノセンスはこの時計。
ミランダはこの適合者。
「おなまーえちゃんに読んでもらいたいのはその部分だ」
「……サポート系の能力ですね、このミランダさんって方」
「ああ。単刀直入に言うとね、彼女の師になってほしいんだ」
「構いませんが、他にも適任はいたのでは?」
「ティエドール元帥に最初依頼したんだけど、おなまーえちゃんを推薦してきたんだよ。君にとっても良い機会だろうからってね。」
サポート系のエクソシストは数が少ない。
元帥においても、ティエドール以外は皆攻撃系のイノセンスと言って過言ではない。
「君への負担はなるべくかけさせないようにする。任務も少なめにするから、ミランダのために時間を割いてやってほしい。」
「わかりました」
言い合えるや否や、コムイはごそごそと机の後ろをいじりだした。
「それからこれ、直しておいたよ」
パッと手を広げる彼の手にはおなまーえの団服が広がられていた。
実は裾のところのボタンが一つ外れてしまっていたのだ。
あまり使わない部分なのでいつから無いのかはわからない。
ただ以前のメンテナンスでは何もなかったので、アレンが来てから失くしたのだろう。
「ありがとう、コムイさん!」
彼女はそれを受け取ると早速腕を通した。
****
「えっと、あなたがミランダさん…?」
「えぇ、そうよ…」
ぱっと見の印象は、暗い女性だった。
目の下のクマは最早模様なのではないかと思う程。
与えられた自室から修練場までの道はそんなに遠くはないが、修羅場をくぐり抜けてきたのかと思うほどのボサボサの髪。
「ここまでくるの大変だった、かな?」
「ええ、ほんとに…」
話を聞くと、どうやらまだこの教団の施設の紹介をされていないため、迷いに迷い、色々な災難に遭遇しながらやっと辿り着いたそうだ。
普段新人への案内役を買ってでてくれていたリナリーが昏睡状態だからか、とおなまーえは合点がいった。
「ごめんね、今教団ばたついてて…」
「本当に、私なんかがこんなところきてよかったんですか?」
資料を見た限り、彼女は要領が悪いのか100回以上の失業経験がある。
こんなに卑屈になるのも訳ないのだろう。
「……まだ直接見たわけじゃないからなんとも言えないけど、ミランダの力は前線をサポートするのにとても有能な力だと思う。私があなたの力を必ず開花させてみせる。」
そう言うとおなまーえは右手を差し出した。
「自己紹介が遅くなってごめんなさい。私はおなまーえ。あなたの師になれるように全力を尽くします。」
「……ミランダ・ロットーです」
恐る恐るといった様子でミランダはその手を握った。
ティエドールが、なんの考えも無しにおなまーえにミランダの指導役を推薦したとは考えにくい。
つまりこの経験を経ておなまーえ自身も何かを学べと言うことなのだろう。