第4夜 黒の教団壊滅事件(?)
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「……切れてやがる」
一方、神田はじっとおなまーえの作った蕎麦を見つめた。
料理は得意ではないくせに、変なところで出しゃばるからこんなことになるんだと内心思う。
(味も微妙。なんかモサモサしてるし……)
一口食べただけでわかる、茹ですぎ感と打ち粉のしすぎ感。
箸で持ち上げてもボロボロと落ちてしまうほどの短さと太さ。
「……ハァ」
だが神田は溜息こそつきながらも、決して味についての文句は漏らさず、蕎麦を完食した。
トレーを返却口に持っていくと、ちょうどおなまーえが皿洗いの手伝いをしていた。
泡だらけになりながらもせっせとスポンジを擦る姿に、得体の知れない生ぬるい気持ちを抱く。
「おなまーえ」
「あ、先輩…」
味はどうだったか、と目が語りかけてきた。
神田は視線を逸らしながら小さな声で「うまかった」と答えた。
「……やっぱり優しいですね、先輩」
絶対に美味しくなかっただろうに、神田はそう答えてくれた。
もう彼の眉間にシワは寄っていない。
トレーを受け取り、おなまーえは嬉しそうな笑顔を向けた。
「私お蕎麦作りも頑張りますから、次はもーっと美味しいのを期待しててくださいね!」
****
歓迎会の準備は滞りなく進んだ。
お皿もだいたい並び終え、あとはアレンを迎えにいくだけである。
彼を連れてくるのはリナリーの役目だが、今彼女はアレンの足止めをしてくれている。
ならばとおなまーえは2人の呼び出しをかって出た。
「――はずだったんだけどなぁ…」
住居エリアの吹き抜けを覗き込むと、科学班の面々が何やら騒いでいた。
関わりたくはないが無視するわけにもいかない。
おなまーえは下に向かって大きく叫ぶ。
「なにかあったのー?」
「室長のつくったコムリンが暴走しやがったんだー!」
「え、コムリン…?」
おなまーえはコムリンに良い思い出がない。
かつて神田の蕎麦を食べたコムリンが、おなまーえに襲いかかったことがあるからである。
今回もまた何か食べ物を含んでしまったのだろうか。
気は進まないが、助けに入ろうとおなまーえは吹き抜けを飛び降りた。
「おなまーえさん!」
「アレン!……今回は貴方なのね…」
コムリンにターゲットを定められているのはアレンであった。
どうやら科学班が総力を挙げてつくった、砲弾付きエレベーターで撃退するようだ。
砲弾がこちらに向き、エネルギーがチャージされた。
アレンの手を引きおなまーえは走る。
「覚悟しろぉ!コムリン2!インテリを舐めんなよー!!」
ジョニーの掛け声とともにビームが放たれ、これでコムリンは再起不能になる―――ことは当然この人が許さなかった。
「ダァーーメェーーー!!」
吹き抜けの上から降ってきたのは、我らの室長コムイ。
彼はエレベーターを操作していたジョニーをホールドして、ビームを阻止する。
「何やってんですか!あんた!!」
「アレンがどうなってもいいのか!!」
「コムリンは悪くないぃぃいい!!」
まるで話を聞かない子供のよう。
と、その時、コムイにホールドされていたジョニーが腕を伸ばし、レバーに手をかけた。
彼にとってはコムイの拘束から逃れるために掴んだものだったのだろうが、それはエレベーターの操作装置。
「「「あ゛」」」
次の瞬間エレベーターがその場で回転し始める。
ついでに充填の完了した砲弾も回るものだから、吹き抜けの至る所にビームを放つ始末。
壁が崩れ、砂埃が舞う。
ビームはおなまーえとアレンの方にも放たれ、彼女はうっかり手を離してしまった。
「アレン!」
「ヒィィ!!」
崩れる壁、止まらないビーム、なおもアレンを捉えようとするコムリン。
まさに地獄絵図。
「どうしよう」
この騒ぎで多くの人が見物に駆けつけたが、誰もこの場を鎮める手段を持っていない。
「なんの騒ぎだ」
「神田!」
「先輩!」
ちょうどいいところで神田が吹き抜けに顔を出した。
教団内での異常とあっては流石の彼でも駆けつけるのだろう。
「話は後です!あいつを、なんとかしないと!!」
コムリンの目と神田の鋭い目が合わさった。
なんだこんなくだらないことかと神田は溜息をついた。
「せめて、弱点さえわかればいいんですけど」
「先輩、前回どうしてましたっけ?」
「前回!?コイツ、前も暴走したんですか!?」
「ああ。似たようなやつだったな。奴の弱点なら心得てる。」
「どこですか!弱点って!」
食い気味にアレンが尋ねた。
神田は顎に手を当て考え込むような真似をすると、ニヤリと笑って答えた。
「ボンノクボ、だな」
「ボンノクボ、ですね……ってどこですか!それ!」
「ここで朽ちるのもお前の運命か」
「アレン、ボンノクボっていうのは」
「おなまーえ、ジェリーが呼んでたぞ」
「ほんと!?あー、ジェリーが呼んでるなら仕方ない。ジェリーが呼んでるんだもの。ジェリーが呼んでるなら仕方ない。アレン、頑張れ!」
ボンノクボとは首の後ろの中心部、ちょうど生え際のところのことである。
説明しようとしたところ、神田からジェリーが呼んでいるとの知らせを受けておなまーえは居ても立っても居られなくなった。
「えぇーー!?」
アレンの悲鳴を背に、おなまーえと神田は揃って離脱してしまった。
食堂までの道すがら、おなまーえの歩調に合わせて歩いてくれる神田に、胸が暖かくなった。
なんだかんだ言いつつも神田はいつもおなまーえに甘い。
本人たちもそれを自覚しているし、周りから見れば特別な関係にも見えた。
「せーんぱい!」
「なんだ?」
「なんでもないです!」
「用もねぇのに呼ぶな」
そう言う神田は満更でもない顔をしていた。
****
最終的にコムリンはリナリーの手によって鎮められた。
ダークブーツを発動した彼女を捉えることなど不可能。
アレンも科学班も奇跡的に怪我をせずにこの事件は幕を閉じた。
今はアレンの歓迎会の最中。
神田は興味ないと参加しなかったが、おなまーえは手伝ったと言うこともあり、きっちり参加していた。
「この麻婆豆腐すんごい美味しい!!」
「よくそんなもん食えるよな、おなまーえ」
おなまーえのために作ったとジェリーが言っていた麻婆豆腐は絶品だった。
あまりにも美味しそうに食べるため、他の団員(下心アリ)が一口ちょうだいと言ってきたが、皆口に含んだ瞬間悶絶して水をがぶ飲みした。
一同口を揃えて「おなまーえの味覚はおかしい」と言ったという。
《第4夜 終》