第4夜 黒の教団壊滅事件(?)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
第4夜 黒の教団壊滅事件(?)
「ただいま戻りました〜」
「おー…」
「みなさんお疲れですね」
「………」
神田とおなまーえが黒の教団に帰宅すると、科学班の面々が伸びきっていた。
彼らは優秀な科学者の集いである。
仕事に対する責任というものも人一倍持っている。
加えて伯爵との戦いは情報戦や技術戦においても引けを取れないため、この職場には常に新しい仕事が舞い込んでくる。
故にたとえ休日だとしても彼らは出勤するという始末。
まさにブラック企業。
「報告書と重要参考人についての資料、ここに置いときますね」
汽車の中で書きまとめた、マテールの報告書とアクマ退治の報告書、それから元教祖についておなまーえが知っていることを書き連ねた書類を科学班の机の端に置いた。
「うっす、ろくに迎えできなくてすまねぇな」
「いえいえ。それにしてもコムイさんどこ行ったんですか?」
パッとみた限り、倒れ込んでいる科学班の中にコムイの姿が見当たらない。
リーバーも首を振って知らないと答えた。
神田は付き合ってられないと踵を返し部屋を出て行こうとする。
「いつものことだろ。行くぞ。」
「あ、私みなさんお手伝いしてから行きますから、鍛錬はまた今度お願いします、先輩」
「あ?」
「リーバーさーん、これ運べばいいんですか?」
「おー、助かる」
「………」
返事も聞かずに、おなまーえはリーバーの元に駆け寄り資料を持ち上げていた。
実のところ彼女は神田と鍛錬の約束をしていた。
少しでも気が晴れればと、この男が珍しく気を遣って誘ったのである。
だが科学班に駆け寄るおなまーえの横顔は生き生きとしていて、もう例の男を殺そうとした彼女の面影はない。
「……チッ」
神田は舌打ちを一つすると、今度こそ科学班の部屋を出た。
****
「これでひと段落ですかね」
「うん、ありがとうおなまーえ」
ジョニーに頼まれた書類のチェックを済ませ、おなまーえは一息をついた。
まだまだ減らない書類の山を見ると卒倒しそうになる。
「あ、そういえば今日はアレンの歓迎会だよ」
「え、なにそれ。聞いてない。」
「おなまーえは任務だったからな」
「今食堂でジェリーが準備してるんだよ」
「へ〜…」
行きたい、という4文字が彼女の表情にありありと浮かんでいた。
それは手伝いたいというよりは、つまみ食いしたいという気持ちが正しいのだろう。
普段神田が近くにいて近づけない分、こういう姿を間近で見ることは珍しい。
ジョニーとリーバーは顔を見合わせて苦笑した。
「行ってきていいぞ」
「ほんとですか!」
パァッと顔が晴れたおなまーえは「お先失礼します!」というと部屋を飛び出していった。
残された科学班はほうっと溜息をつく。
「……いいよなぁ、神田はいつもあんなおなまーえがみれるんだから」
「おい、誰かあの顔撮ったか?」
「逃した」
「ちくしょう、あのピン写は高く売れたのに」
「お前ら、仕事しろー」
すっかりおなまーえに魅了されてしまった科学班は、身体を起こしてもう一踏ん張りした。
****
タッタッタッとおなまーえは階段を上る。
この黒の教団は大きな崖の上にそびえ立っているが、外から見える範囲はあくまで団員の自室や食堂、大浴場、娯楽施設などの生活の場が中心となっている。
建物からしてみれば地下の部分、要は崖の内部には1000年以上前に掘り下げた空間があり、戦争において肝心要となる施設は基本的にこの部分に配備されている。
科学班の部屋から食堂まではそれなりに上る必要がある。
階段の踊り場くるりとUターンし、また駆け上がろうとしたその時。
「きゃっ!」
「ごめっ!」
コーヒーを持ったリナリーと危うくぶつかりそうになった。
急に立ち止まったため、おなまーえはバランスを崩して尻もちをついてしまった。
「いててっ」
「だ、大丈夫?ごめんね、私前見てなくて…」
「いや、走ってた私が悪いよ。驚かせてごめん、リナリー。」
立ち上がっておなまーえは短パンを払う。リナリーの後ろからひょっこりとアレンが顔を出した。
「すごい音しましたけど、本当に大丈夫ですか?」
「女の子にそういうこと言っちゃだめだよ、アレンくん」
「え、あ、そんなつもりは…!失礼しました!」
「いいよいいよ。驚かせてごめんね。」
アレンとリナリーを見ていると、なんだか姉と弟のように見えてくる。
アレンは紳士的で優しい。
神田とはともかく、他のエクソシストとは仲良くやれそうだと心の奥で安心する。
「どこに行こうとしてたの?」
「ジェリーのところに」
「あ、あーーそう、えっとそのー」
妙に歯切れの悪くなったリナリー相手に、何かあるのかとおなまーえはすぐに察した。
「私今行っちゃいけない?」
「いや、おなまーえは大丈夫!」
今日はアレンの歓迎会。
おそらく内緒で企画しているのだろう。
アイコンタクトで大丈夫と告げると、リナリーはほっと胸をなでおろしていた。
「あ、そういえば神田が不機嫌だったよ。もしかして任務不発だった?」
「あー、いや、うん…」
不機嫌の心当たりはある。
せっかく鍛錬に誘ってくれたのに、その約束を反故にしてしまった。
「あとでなんとかフォローしとく」
苦笑いをし、おなまーえは2人に別れを告げると、食堂まで走った。