Chapter.4
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Chapter.4
翌朝。
「……これでよし。ふぅ」
全ての兵器の点検が済み、おなまーえは額の汗を拭った。
合間の時間にハウルに頼まれていた指輪のもう一つも完成させた。
これで彼からの依頼は完遂できた。
「お腹すいたな」
おなまーえは兵器を直ぐにでも出荷できる状態にして工房を後にした。
リビングではぐったりとしているソフィーがいた。
「どしたの?」
「敵軍の襲撃に遭ったんだよ」
「あらま、それは御愁傷様」
水を渡したマルクルもソファに座った。
何か朝ご飯になりそうなものがないかとおなまーえは食糧庫を物色する。
「わあぁぁああああーーっ!!」
「わっ!?」
「え?」
突如上の階から悲鳴が聞こえた。
この声はハウルだ。
彼が声を上げることなんて滅多に無い。
というか、見たことがない。
「ああぁあ!!ああ!あああぁあー!」
ダダダっとものすごい足音を立てて階段を降りてきた。
未だかつてこんなに彼が感情を露わにしたことがあっただろうか。
おなまーえは階段の下から彼を除いた。
「一体どうしたのよ、ハウ…え?」
おなまーえは思わず言葉を失った。
「ソフィー!風呂場の棚いじった!?」
現れた彼は腰にタオルを巻いただけの状態で…いや、そんなことは些細なことだ。
何より目を引くのは彼の頭。
ハウルの髪色が赤毛色に染まっているのだ。
彼は階段を勢いよく駆け下りると、おなまーえを突き飛ばしてソフィーに詰め寄った。
「見て!こんな変な色になっちゃったじゃないか!!
「き、きれいな髪ね…」
頭をぐっと押し当ててきたハウルに、ソフィーは少し引き気味だ。
突き飛ばされたおなまーえは「いてて」と言いながら立ち上がりスカートを払った。
「よく見て!!ソフィーが棚をいじくって、呪いをめちゃくちゃにしちゃったんだ!」
「何もいじってないわ、綺麗にしただけよ。」
「えーっと…ソフィーさん?もしかして小瓶並び替えたりしました?」
「したわよ?」
「あぁー…」
彼女は悪気も無く、本当にただ掃除するためにハウルの棚を弄ってしまったのだ。
彼の長年の成果を一瞬で台無しにしてしまったのだ。
ハウルはこの城が出来た頃からずっと髪の色を何度も調整していた。
『おなまーえの髪の色、とても綺麗だね。まるで天使みたい。』
『……そうかな?私としてはあまり気に入ってないから染めたいんだけど…』
『えー、勿体無いよ。そうだ、僕もおなまーえと同じ色にするからさ、その間は絶対染めないでよ。』
『えぇー?』
おなまーえのような薄い金色にするとずっと言っていた。
理想の色が完成した時にはそれはそれは嬉しそうにしてたっけ、とおなまーえは現実逃避する。
「掃除、掃除、掃除!だから掃除も大概にしろって言ったのに!!」
ハウルはへたっと椅子に座りこんだ。
「絶望だ……何という屈辱…ぅっ、うっ…ううぅっ…」
「えっと、そんなにひどくないわよ?」
「ううっ…うっ…」
「わ、わたしはそれはそれで綺麗だと思うけど?」
「……もう終わりだ。美しくなかったら生きていたって仕方がない。」
泣き崩れるハウルは周りの声が一切聞こえないようだった。
彼を中心に部屋の空間が歪み始める。
この禍々しい気は闇の精霊のもの。
「ええっ!?」
「やめろー!ハウル、やめてくれ!」
「ハウル、気を確かに!」
おなまーえが近寄っても彼はピクリとも反応しない。
これは相当末期だ。
「闇の精霊を呼び出してる!前にも女の子にふられて、出したことがあるんです!」
「えぇ!?」
状況がわかっていないソフィーにマルクルが解説をした。
「私の魔力をこんな無駄遣いしないでよ。ハウル!ハウル!!」
彼の横に座って顔を覗き込むが彼は目を見開き硬直している。
「さぁハウル、もうやめなさい。髪なら染め直せばいいじゃない。」
ソフィーももう一度優しい声で語りかけた。
でも髪を染めるのも決して簡単ではないことを彼女は知らない。
何年かけて彼があの色を作ったのかも彼女は知らない。
ハウルの肌から緑色の液体が溢れ出てきた。
彼の肩に手を置いていたソフィーは「ヒッ」と言って手を引っ込める。
「ハウル、落ち着きなって。ハウルはどんな髪色でも美しいよ?」
「……」
「ダメか…」
「…もう!ハウルなんか好きにすればいい!わたしなんか美しかったことなんて一度もないわ!!」
とうとう我慢ならないとソフィーが叫んだ。
涙目で叫ぶと彼女はドタドタと玄関に向かって行ってしまった。
「こんなとこ、もう嫌っ!」
「あーもう、どいつもこいつも…。マルクル追いかけて。外は危険だから。」
「わかった!」
外へ飛び出したソフィーを追いかけるように指示した。