Chapter.3
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おなまーえは黒鳥となったハウルの背に乗っていた。
がっしりとした羽根を掴み、落ちないように足を跨らせる。
2人の目下には火の海が広がっていた。
「……酷い有様」
もう何分も飛行しているが、赤い光が途絶えることはなかった。
最新式の飛行機がぽとぽとと爆弾を落として行く。
それだけの行為でどれだけの命が吹き飛ぶというのだろうか。
(私の兵器もこうやって使われるのね)
敵軍同士の飛行機がぶつかり合い、相打ち覚悟で次々と落ちていく。
その中でもキングズベリー、即ちサリマンの保護下にある船だけは落ちずになにかを吐き出していた。
「……あれって、元人間?」
「戻る見込みはないさ」
「心が?体が?」
「両方」
「ふーん…」
「…どうやら気づかれたみたいだ。おなまーえ、突っ込むよ。」
「りょーかい」
彼は飛んできた生物を睨みつけると、ニヒルな笑みを浮かべて体当たりしにいった。
おなまーえは自分と彼の周りに結界を張って、落ちないように羽根をつかみ直す。
一部はそれだけで戦闘不能となり落ちていったが、回避した奴はこちらを追いかけてきた。
ハウルは高度をぐんぐんと上げていく。
暗雲を抜けると幻術をかけて敵の目をくらませた。
****
奴らを巻きなんとか家に着くと、ハウルはフラフラとした足取りで暖炉の前の椅子に腰を落とした。
足はカルシファーの正面に放り出し、首はこてんと上を向いている。
非常に疲れた様子が伝わってくる。
おなまーえはタオルを濡らして、鳥の姿のままの彼の顔を拭いた。
「…ふぅー」
やっと人心地ついたと彼は息を吐いた。
「臭い。生き物と…鉄が焼ける匂いだ。」
「うん…酷かった…」
カルシファーの言葉は正しい。
あの街で生きていられる人間などもういないだろう。
「はぁ、はぁ……んうっ!…くっ…」
ハウルが唸りだした。
彼の体が徐々に人の形へと戻っていく。
おなまーえはそれを見守ることしかできない。
「…はっ…はぁ…」
「お疲れ様。ありがと、連れてってくれて。」
「……あんまり飛ぶと、戻れなくなるぜ。」
「……」
彼の体のことはハウル自身が1番よくわかっている。
だがそれでも無茶をして隠そうとするのがハウルなのだ。
一体誰のためにこんなに強がっているのか。
カルシファーはそばに置いてあった薪を自分の手でとった。
「すごいだろ、ソフィーが置いてくれたんだ」
彼は得意げに笑った。
確かにこの方法ならカルシファーが燃え尽きる心配もない。
「……ひどい戦争だ。南の海から北の国境まで、火の海だった。」
「オイラ火薬の火は嫌いだよ。奴らには礼儀ってものがないからね。」
おなまーえはコップに水を入れてハウルに差し出した。
彼は一口だけそれを飲むともういいとコップを突きかえす。
「同業者に襲われたよ」
「荒地の魔女か?」
「いや。三下だが怪物に変身していた。」
コポポポと自分の分の水を注ぎおなまーえはそれを一気に飲み干した。
「そいつら、後で泣くことになるな。まず人間には戻れないよ。」
「あの手の魔法具は安価に入手できる分、解除できないよ」
「平気だろ。泣くことも忘れるさ。」
「ハウルもおなまーえも、国王に呼び出されてるんだろ?」
「まあね」
「私は明日行ってくるよ」
ハウルは立ち上がった。
「風呂にお湯を送ってくれ」
「えっ、またかよ」
「あ、私も」
「えー、お前らまとめて一緒に入っちまえよ」
彼はコツコツと緑のカーテンに歩み寄った。
その後ろからおなまーえも覗くと、茶髪の少女があどけない表情で寝ていた。
一瞬誰かわからなかったが彼女はまごう事無くソフィーだ。
「………」
声をかけるわけでも無くただ彼女の寝顔を見つめるハウルに、正直おなまーえは心中穏やかではなかった。
「わ、私今夜は商品の点検しなきゃいけないから、工房で過ごすね」
おなまーえはパタパタと自分の工房の中に入って行った。
(……なんだろう、この気持ち)
閉めたばかりの扉に背を預け、彼女は自分の心臓をぎゅっと握った。